札幌3発逆転、ペトロビッチ監督外国人最多174勝

札幌対東京 後半27分、ゴールを決め笑顔で走り出す札幌MFチャナティップとFW都倉(左)(撮影・佐藤翔太)

<明治安田生命J1:札幌3-2東京>◇第23節◇19日◇札幌ドーム

 北海道コンサドーレ札幌ミハイロ・ペトロビッチ監督(60)が、FC東京を3-2で下し、外国人監督最多のJ1通算174勝目を手にした。

 2点を追う後半開始からMF白井を投入。8分にFW都倉のゴールで1点返し、23分に白井が期待に応えて同点ゴールを決めた。MFチャナティップの決勝弾を含む後半3得点で試合をひっくり返した。采配がズバリ的中した指揮官は、Jリーグで指揮を執り13シーズン目、3クラブ目となる札幌で、歴代単独2位となる記録をマークした。順位は6位のまま、勝ち点を35に伸ばした。

 J1で聞く174度目の勝利のホイッスルに、ペトロビッチ監督は両手で3度ガッツポーズをつくり、叫んだ。派手な勝利のアクションも、試合前のお札を手にお祈りする験担ぎも、テクニカルエリアの破線から足を出して審判から注意を受ける熱意も、いつもと変わらない姿。だが、巧みなタクトを振るい、大逆転劇でJの歴史に名を刻んだ。「心臓が弱い方にはなかなかキツい試合だったのでないでしょうか」。後半から投入した白井が勝利の立役者。見事な“脚本”に、指揮官は満足そうだった。

 J1で積み重ねた白星は、J2での1シーズンがなければ生まれなかった。広島で指揮を執って2年目の07年にJ2降格を経験。再昇格を狙った翌08年、第10節徳島戦で3-4-2-1のフォーメーションを初めて試した。得点は取れても、カウンターに弱い。それまで確立していた3-3-2-2のスタイルを捨てた。思い切った戦術変更が、はまった。J2で年間勝ち点100を稼ぎ、1年でJ1返り咲き。「ミシャ式」と呼ばれるシステムの原点だった。

 札幌で指揮をとる今季、「ミシャ式」はさらに進化を遂げた。ともに歩んで13年になる杉浦コーチ兼通訳は「前に高さのある選手がいるから、外からのクロスは1つアップデートしたかなと思う」と言う。長身FWのジェイ、都倉を生かすための策。この日、反撃ののろしを上げた1点目も、福森のクロスに都倉が頭で合わせる“札幌流”だった。

 選手がプレーしていて「楽しい」と口をそろえるサッカーは、見ている人も楽しませる。「0-0というのは、どちらも攻めない退屈な試合。私の中ではない戦い方」。守備に徹して負けるなら、リスクを負って攻撃的に挑む。欧州のサッカー観で日本のサッカー観もいつか変えたいという思いがある。だからこそ、昨季途中で浦和を解任になって、中国のクラブから興味を示されても、Jリーグでの仕事を選んだ。

 J1年間11位が最高の札幌での新たな挑戦の真っ最中。「今日のような勝利で恩返ししたい」。可能性を秘めた北のクラブで、サポーターを魅了し続ける。【保坂果那】

 ▼札幌ペトロビッチ監督が東京戦の勝利で、外国人監督J1通算最多勝利数となる174勝(87分け109敗)に到達した。クラブ別の内訳は広島62勝38分け58敗(06~07年、09~11年)、浦和103勝41分け46敗(12~17年)、札幌9勝8分け5敗(18年~)。J1の年間優勝はなく、浦和時代の15年第1ステージ優勝(年間3位)と16年第2ステージ優勝(年間2位)がある。