鹿島がACL初制覇!我慢肝に総力戦で示した一体感

<アジアチャンピオンズリーグ:ペルセポリス0-0鹿島>◇決勝第2戦◇11日◇アザディ競技場

国内19冠を誇るJリーグの名門鹿島が、念願のアジア王者となった。イランの超名門ペルセポリスに敵地で0―0。第1戦を2―0で制していたため、2戦合計2-0で勝利し、アジアの頂点に立った。

鹿島は優勝賞金4000万ドル(約4億4000万円)とクラブW杯(12月12日開幕、UAE)の出場権を得た。

ゲーム終了の笛がなると、鹿島の大岩監督の目からはとめどなく涙があふれた。8度目の挑戦での悲願達成。喜びはひとしおだった。

敵地で無失点に抑えたDF昌子源は「日本で待っている鹿島ファミリーのために必ず優勝しようと話していた。(守備では)責任を持って体を投げ出さないと思っていた。(無失点は)全員のハードワーク合ってこそ」と赤らめた目で言った。

大会MVPにはFW鈴木優磨(22)が選ばれた。表彰式ではベテラン39歳小笠原満男、曽ケ端準を中心に喜びを分かち合った。

過酷な舞台だった。標高1000メートルを超える競技場。空気抵抗が少なく、ボールは伸びる。緩い土に長い芝生。10万人の大観衆にピッチ上の声はさえぎられる。一方、鹿島サポーターは、イラン在住の25人を含む221人と、大使館やガイドらを含めてもわずか約250人。かつてない環境の中だったが、それでも選手は「いつも通り」の心境で戦った。

前半は相手8本のシュートに対して6本とほぼ互角の展開のまま0-0で折り返す。後半に入っても一進一退の展開が続き、互いにゴールが割れなかったが、第1戦0-2で負けているペルセポリスの選手たちの焦りは募る。終盤は後のない相手に猛攻を受けたが、第1戦の貯金2点リードを糧にしっかりと守った。試合は0-0のままで終了。鹿島の初優勝が決まった。

国内主要19冠を誇るクラブが、国外では勝てない。「内弁慶」とやゆされたこともあった。浦和、G大阪に先を越された、常勝軍団が唯一、手にしていないタイトル。それがかえって、クラブにおけるACLの存在を大きくしてきた。

鹿島は国内のアウェーで戦う際、武道の神をまつり、必勝祈願を行う鹿島神宮のお神酒を置く“神棚”を、神宮に向けて控室につくる。昨年末、クラブ幹部はそれを「国外でも持っていかないと駄目かな」と嘆き、神頼みをしようとするほど“鬼門”と化していた。

より一層、重視されたACL対策。今年は初めて決勝トーナメント(T)初戦の壁を突破した。だが、変えたのは真反対の思いだった。MF土居は言う。「今年はいい意味であまり『重要視』していなかった」。

象徴的だったのが、3月のアウェーのシドニーFC戦。国内にDF昌子やFW金崎、MF小笠原ら“主力”を残し、MF三竿健も控えに据えた。その中で勝ち点3を積み上げた。「全員で戦った感じがあった」と土居。一体感が生まれた。

越えなければと力が入り、1次リーグから主力で臨み続け、途中で緊張の糸が切れた今までとは違った。心に「鬼門」をつくらない。あくまで通過点-。すると、扉は開いた。西や内田ら負傷者も復帰し、チーム力はさらに押し上がった。

「我慢」も押し上げた。過密日程やけが人の続出。前半戦は苦しんだ。ミスした選手を責める雰囲気もあった。だが、W杯中断を経て転機は訪れた。9月のルヴァン杯・川崎F戦。その期間、代表で離れていた三竿健は「間違いなく、川崎に勝ったあたりからチームの雰囲気が変わった。かばい合う、いい雰囲気になった。帰ってきて感じた」。

植田やエース金崎の放出がありながら、それに代わるチョン・スンヒョンやセルジーニョが、あまりに早くとけ込めたのも無縁ではない。全員が「我慢」を肝に銘じ、助け合った。そこに結果が加わった。内田はこう言っていた。「いいサッカーをして結果が出るわけじゃない。結果が出て、いいサッカーができてくる」。歯車が好循環した。

8月に、鹿島に流れる哲学の創始者と言える、ジーコがTDとして復帰したことも大きかった。「どんな試合でも勝つこと」「最後、頂点に立っていないと意味がない」-。敗北を許さないスピリット。放つ言葉の重みが、引き締めていく。復帰後の23試合で14勝5分け4敗。それ以前の12勝8分け9敗から、勝率は2割も上がった。

そのジーコが決戦前日の9日、選手に改めて伝えた。「自分が何か成し遂げたい、自分が…という気持ちになったらチームは勝てない」。強調されたフォア・ザ・チームの心を、選手は最後まで忘れなかった。

ACL決勝を前に組み込まれた容赦ないJリーグの日程も、普段は試合にあまり出られない選手を大幅に送り出して臨み、第1戦前の10月31日セレッソ大阪戦は1-0で耐え忍び、第2戦前の11月6日柏戦は1-2から逆転勝ち。過密日程を逆手に取れたことで、ムードは最高潮に達した。リーグ3連覇時代でも成し得なかった悲願に、文字通り「総力戦」で挑み続けた。その思いが、クラブとしてACL60試合目、今季53試合目でやっと報われた。