東京VがJ1参入PO初戦突破、藤川さんの魂と共に

大宮対東京V 前半、ボールを追う東京V・FW林(右)と大宮DF菊地(撮影・河野匠)

<J1参入プレーオフ:大宮0-1東京V>◇1回戦◇25日◇NACK

J2年間順位6位の東京ヴェルディが、退場で1人少ない苦境の中、後半26分にDF平智広(28)が決めた1点を守りきり、同5位の大宮アルディージャを破り、12月8日に行われる年間順位3位の横浜FCとの2回戦(午後1時キックオフ、ニッパツ)に進出した。

アウェーで大宮に勝たなければ2回戦に進出できない東京Vは、15日に亡くなったOBの藤川孝幸さん(享年56)が前身の日本サッカーリーグ(JSL)読売クラブ、そして93年のJリーグ開幕後のヴェルディ川崎で95年に引退するまで12年間背負った背番号18に「FUJIKAWA」の名がマーキングされたユニホームをベンチに掲げた。選手たちは喪章を巻いてピッチに立ち、サポーターもスタンドに「藤川さんの魂と共に」と書かれた横断幕を掲げた。

その東京Vが、序盤から巧みなパス回しでボールを支配した。右サイドのFW奈良輪雄太、左サイドのDF香川勇気の、縦の仕掛けからのクロスも有効で、大宮を陣内に押し込んだ。前半15分、FW佐藤優平が自ら蹴った右CKからのこぼれ球を拾い、パスすると、受けたMF井上潮音がシュートを放つも、枠を外した。同25分には、佐藤がペナルティーエリア前でDFをかいくぐってシュートも、わずかに枠を外した。前半39分には、奈良輪が左に大きくサイドチェンジしたボールを香川が折り返すと、中央のMF井上がシュート。タイミングは良かったが、GK塩田仁史の正面を突いた。

一方、前身のNTT関東サッカー部から98年3月に大宮アルディージャと改称し、20周年の大宮アルディージャも、サポーターが「平成最後の下克上 クラブ20周年の集大成 積み上げたものを信じて共にJ1へ帰ろう」と横断幕を掲げたが、ペースを奪い返せない。24得点でJ2得点王のFW大前元紀に、従来は左のアタッカーを務めることが多い同6位の12得点のマテウスとの2トップでスタートしたが、サイドでの推進力が光るマテウスがトップにいるせいか、なかなかボールを運べない。前半30分には、右MFに入った富山貴光が、本来のトップに入り、マテウスがサイドに出る場面もあった。

後半からは、富山が前に入りマテウスが左サイドに出るなど、前線が流動的に動き、大宮が押し返した。その中、後半14分、マテウスが自陣ペナルティーエリア前で、東京VのMF内田達也と接触し、左ひざを押さえてもん絶。内田には、この日2枚目のイエローカードが提示され、退場となった。

勝利が義務付けられる中、1人、少なくなり絶体絶命になった東京Vが後半26分、先制した。香川が左サイド深くに仕掛け、DF酒井宣福に倒されて得たFKを佐藤が蹴ると、飛び込んだ平が頭で合わせ、ゴール右に押し込んだ。平は、チームカラーの緑に染まったスタンドに走り寄り、喜びを爆発させた。

大宮は後半36分、顔を痛めたMF大山啓輔に代えてMF横谷繁、MF茨田陽生に代えて長身199センチのFWロビン・シモビッチを投入。ロスタイム3分にはシモビッチが決定的なシュートを放つも、左ポストに弾かれた。

東京Vは17年、初めて進出したJ1昇格プレーオフ1回戦でアビスパ福岡に0-1で敗れ、昇格を阻まれた。2年連続で挑んだプレーオフ初戦を乗り越え、08年にJ2に降格して以来、11年ぶりのJ1復帰へ、1歩前進した。