仙台椎橋VS山形山田 みちのくダービーで市船対決

仙台MF椎橋慧也

東北サッカー界で今年最注目のカードが実現する。「みちのくダービー」となる天皇杯準決勝のJ1ベガルタ仙台対J2モンテディオ山形が12月5日、ユアテックスタジアム仙台(通称ユアスタ)で行われる(午後7時開始)。公式戦では3年ぶりの対戦で、これまで仙台が22勝、山形が18勝、引き分け16とほぼ拮抗(きっこう)する。14年以来2度目の決勝進出を目指す山形と、目標に掲げる初のカップ戦ファイナリストを目指す仙台が、「東北の雄」を懸けて激突。ともに市船橋(千葉)出身の山形DF山田拓巳(29)と仙台MF椎橋慧也(21)もマッチアップし、火花を散らす。【取材・構成=下田雄一】

伝統のみちのくダービーで、同窓生が初めて顔を合わせる。仙台の新鋭MF椎橋にとって、山形はプロ入りを目指していた高校3年時に、山形FW永藤歩(20=ザスパクサツ群馬にレンタル移籍中)と練習参加したなじみあるチーム。その際、高校の大先輩でもある山田、元仙台のDF渡辺広大(31)に食事に誘われ、プロとして生きるすべを指南された。

椎橋 天皇杯準決勝という舞台で、お世話になった山田先輩のいる山形とやれるのはすごく楽しみだし、先輩と同じピッチ立てるのでワクワクします。山形に練習参加したとき、フレンドリーに接してもらってすごくありがたかったです。

3年目の椎橋にとってダービーは初経験となるが、異様な雰囲気はすでに体感済みだ。練習参加していた15年5月27日、ナビスコ杯第6節をユアスタで観戦。山形は前半に元仙台のFW万代宏樹(32=J3AC長野パルセイロ)のゴールなどで2点を先制。仙台は後半途中出場したMF梁勇基(36)が直接FKを決めたが、予選リーグ敗退となった。

椎橋 梁さんがフリーキックを決めたのは今でも覚えています。ダービーは絶対に負けられない、意地と意地のぶつかり合い。山形の「仙台だけには負けられない」という気持ちが伝わってきました。山形はリーグが終わって万全で来ると思いますが、負けるわけにはいきません。

先輩の山田は08年に山形入りし、今季でプロ11年目。その間、2度のJ1昇格と2度のJ2降格を味わった。みちのくダービーでは4勝5敗1分け。15年には開幕戦となった仙台戦にDF渡辺と先発出場したが、仙台FWウイルソンに2ゴールを決められ敗れた。その試合で左ひざ内側側副靭帯(じんたい)を損傷する大けがを負うなど、ダービーの記憶を体に刻み込む。

山田 サポーターの人たちの期待も他のチームと対戦するより大きい。自分たちも、久々のダービーが天皇杯の準決勝という大舞台で、自然と力が入ります。天皇杯ではチャレンジャーとして臨めているし、見栄えは良くないけど格上の相手に割り切って戦って勝ち上がってきた。サポーターの盛り上がりも違うし熱がすごい。ダービーを経験したことのない若手が多い分、思い切りぶつかっていける。結果は後からついてくればいい。

ここまで柏レイソル、FC東京、川崎フロンターレのJ1勢を撃破し、ジャイアントキリングを成し遂げ勝ち上がってきた。3年ぶりに実現したみちのくダービーで、ファイナル進出を懸けて後輩と相対する。

山田 (椎橋は)ベガルタに行っても気にかけて見ています。(今季は)リーグ戦で試合にも出始めているし、充実したシーズンを送っている。高校の後輩と同じピッチで試合ができることは、なかなかないことだし、先輩として負けるわけにはいきません。試合を楽しみながらも、チャレンジャーの気持ちで臨んで結果がついてくれば、最高です。

多くのドラマを生み出してきたみちのくダービー史上でも、語り継がれる一戦になるのは間違いない