浦和V 監督自らサポ集う飲食店訪問し熱烈応援直訴

浦和対仙台 今季引退を決めたMF平川(中央)とともに歓喜する浦和イレブン(撮影・横山健太)

<天皇杯:浦和1-0仙台>◇決勝◇9日◇埼玉

浦和レッズがベガルタ仙台を1-0で下し、前身の三菱重工時代を含め12大会ぶり7度目の優勝を遂げた。前半13分にMF宇賀神友弥(30)が先制ボレーを決め、逃げ切り。93年のJリーグ発足後では初となる大会4試合連続完封を遂げた王者になった。4月に今季3人目として途中就任したオズワルド・オリベイラ監督(68)がチームを立て直し、来季のACL出場権を獲得。賞金1億5000万円を手にした。

中立地扱いながら完全ホームと化した埼玉で、浦和が天皇杯を制した。後半43分から「ウィーアーレッズ」の大コール。真っ赤なスタジアムで今季最後のタイトルを奪い、栄光のカップをMF柏木が、今季限りで引退するMF平川が天に掲げた。オリベイラ監督も「感情を抑えられない。オメデトー!」と絶叫した。

優勝決定弾は前半13分だった。右CKのはね返りを宇賀神が神懸かり右足ボレー。守ってはJ発足後初となる4戦連続完封を達成しての頂点に立った。導いたのは68歳の名伯楽だ。鹿島で07~09年のリーグ3連覇を含む6冠に輝いたオリベイラ監督が4月に就任。鹿島時代は4バックが代名詞だったが、浦和の3バックを柔軟に継承し、天皇杯6戦1失点の堅守を築いた。

就任後「無気力に見えた」チームにまず伝えたのは「ACLへ行く」だった。今年7月11日の天皇杯3回戦(対松本)。ワールドカップから帰国したばかりのDF槙野とMF遠藤(当時)に頭を下げた。休暇を欲した2人を「何としても天皇杯を制してアジアの舞台に返り咲きたい」と説得。2日間だけ休ませ、フル出場させた。鬼の起用にタイトルへの執念を込め、決勝も「普段なら使わない」という負傷を抱えた興梠、柏木、武藤、青木を先発させて勝ち「負傷者が多く昨夜は寝られなかったが、彼らが英雄になってくれた」と称賛した。

一体感を高めるため試合2日前から選手全員で食事するルールを設けた。タレント軍団に夏場、2部練習を課した。今月1日のリーグ最終節後にはサプライズ。会見で天皇杯の前日練習を公開すると予告し、見学と横断幕の掲示を呼び掛けたが、それだけで終わらなかった。夜、さいたま市内の浦和サポーターが集う居酒屋を極秘訪問。「101%の力を出さないと勝てない。その限界を超える力を与えてくれる」というサポーターに直接応援を頼みに行き、この日も5万人超からの声援を力に変えた。

公約通りACL出場権を獲得し、2大会ぶりアジア王者への挑戦権を得た。既に続投が決定。C大阪の日本代表FW杉本らにオファーを出すなど補強にも着手している。「みそ汁なしでは生きられない。今日も朝と昼に飲んで万全」と笑う親日家の名将は「ACLを戦えない状況だけは避けたかった」。平成最後の天皇杯を制覇し、アジアの舞台に再び導いた。【木下淳】

◆天皇杯優勝回数 浦和は前身の三菱重工時代の4度を含めて通算7度目の優勝。最多優勝は慶応BRBの8度で、7度は関学クラブ、横浜(日産時代含む)と並び2位。Jリーグ発足後は05、06年度に次いで12大会ぶり3度目の優勝。こちらは鹿島の5度、G大阪の4度に続き3位。

◆天皇杯決勝 元日決勝が恒例の天皇杯だが、今大会は来年1月5日に開幕するアジア杯など他の大会との兼ね合いで前倒しとなった。次回大会は2020年元日に新国立競技場で決勝が行われる。