仙台シュミット 1年間、感謝忘れず戦っていきたい

今季の心構えを漢字1字で「謝」と書き記した仙台GKシュミット(撮影・下田雄一)

仙台育ちの日本代表GK、ベガルタ仙台のシュミット・ダニエル(26)が2日、アジア杯の開催地であるUAEへ向けて出発した。19年新シーズンに備えて、早くも昨年12月16日から本格始動を切った守護神が日刊スポーツの単独インタビューに応じ、地元愛に満ちあふれる心情を新春メッセージで伝えてくれた。今季の1文字に「謝」と力強く書き記し、感謝の気持ちを胸に飛躍を誓った。【聞き手・下田雄一】

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仙台シュミットは新年を迎えてにあたり、毛筆で力強く今季の1文字を「謝」と書き記した。

シュミット 自分で言うのも何ですが、バランスよく書けてませんか?(笑い) 感謝の気持ちを忘れずに、1年間戦っていきたいという思いからこの字を選びました。今、自分がこうやってサッカーができているのは周りの人々のおかげだと思います。アジア杯の代表に選ばれて、本当だったら昨年の暮れは1人で調整せざるを得ませんでしたが、石野コーチが自主トレに付き合ってくれました。普通だったら1年間の疲れを癒やしてゆっくり休む時期なのに、息子さんも伴って自分のために時間を割いて付き合っていただき、感謝の気持ちしかありません。毎日気持ちよくサッカーができるのも、家族の癒やしがあってこそ。そういう意味でも、感謝の気持ちを忘れずに過ごしていきたいです。

街を歩くと身長197センチというサイズの大きさから、好奇のまなざしで見られることが多かったが、その視線に変化を感じ取れた1年だった。

シュミット 三越、藤崎などデパートはよく行きますね。あとは娘を連れて連坊など仙台駅の東側を散歩しています。「1年間お疲れさまでした」と激励されたり、地元なんで声をかけてもらう頻度もこれまで以上に増えました。今まではただ「デカイやつが歩いている」みたいな視線で見られていましたが、最近は「日本代表のシュミット・ダニエルだ」と認識してもらえているなと、すごく感じます。まあ、注目されるのも今だけかもしれませんけど(笑い)。

高さもあり、足もとの技術も高い新種のハイブリッド型GKとして、次世代ジャパン守護神の呼び声が高い。意外にも中1のとき、半年間サッカーから離れ、バレー部に所属していたという。

シュミット よく覚えていないんですけど、サッカーをやめようかなと思った時期があったんです。そのとき、仲のいい友達からバレー部の部員が少なくて困っているからと誘われたんです。でも、今思うとそのときの経験は生きているなと思います。レシーブなどでシンプルに来るボールに対して、反応する感覚はあのとき養えたと思いますね。

将来的には欧州移籍を志向する。中でも、数々の名キーパーを輩出するドイツにあこがれを持つ。

シュミット ドイツはなぜか、すごいゴールキーパーがたくさん輩出されるんです。どうしてそんなに出てくるのかと普通に疑問に思っているので、それを体感してみたい気持ちは強いです。ドイツのキーパーは構えや止め方がみんな似ていると思うんです。小さい頃から確立された理論のようなものがあるからだと思うんです。特に、バルセロナでプレーしているテア・シュテーゲンはすごい。決定的なシュートを止めたり、攻撃の起点にもなれるし、何よりもキーパーにとって一番大事な要素である強くて動じないメンタリティーを持っている。あの選手のようになれたらな、という思いは強いです。

昨季は日本代表に初選出されるなど飛躍を遂げた。リーグ戦に出続けたことで、試合でなければ得られないであろう経験値を積み上げた。明暗混在したシーズンで、自身のベストゲームと最も悔いの残る失点シーンを振り返った。

シュミット ベストはアウェーのサンフレッチェ広島戦(11月10日)ですね。試合も落ち着いてできていたし、勝利につながるセービングができた。チームが苦しい時期だったし、なおかつ無失点で切り抜けた。悔いが残るのはアウェーの横浜F・マリノス戦(9月29日)ですね。山中亮輔にミドルシュートを決められた。ニアサイドに位置していたので、打たれた瞬間は止められると思いました。雨も降っていて強いシュートだったので、パンチングで止めに行ったんですが手に当たらなかった。グーで行かないでパーで行く選択肢もあったので、あれは判断ミスでした。4失点目も味方のバックパスの処理を誤って、ウーゴ・ヴィエイラに決められたのももったいなかった。キックフェイントを入れたり、セーフティーに蹴っていれば防げた失点。キーパーはアクションするのではなく、リアクションで判断しないといけないんです。

今季は代表GKの肩書を背負って戦う、新たなシーズンの幕開けとなる。

シュミット 昨年は反省材料もいっぱい出たので、それを今年にどうつなげていくのか試されると思う。失点数を減らさないと、昨年やられてきたことが意味がないので。アジア杯を終えたとき、モチベーションがみなぎっているのか、すごく疲れているのか分からないですけど、新しいシーズンをとても楽しみにしています。

◆シュミット・ダニエル 1992年2月3日生まれ、米イリノイ州出身。父が米国人で母が日本人。2歳で来日し、小2のときに八幡スポーツ少年団でサッカーを始める。仙台スポーツシューレFC、東北学院中高を経て中大に進学し、全日本大学選抜に選出された。14年に仙台入り。ロアッソ熊本、松本山雅FCへの期限付き移籍を経て17年に復帰。16年に日本代表候補のGKトレーニングキャンプに参加。昨年8月30日、新生森保ジャパンの初代メンバーに選出されて初代表。同11月16日のキリン杯ベネズエラ戦で代表デビューを果たし、フル出場で1失点(スコア1-1)。J1通算38試合出場。197センチ、88キロ。