平瀬智行氏&TAX、ベガルタ愛あふれる新春トーク

ベガルタ仙台を熱く語る平瀬氏(左)とMONKEY MAJIKのTAX(撮影・下田雄一)

<みちのくプラス!!>

異色のベガルタ新春コラボが実現した。ベガルタ仙台OBで現クラブコーディネーターの平瀬智行氏(41)が仙台を拠点とする4人組ロックバンド、Monkey Majikのドラマーで熱狂的サポーターのTAX(43)と「居酒屋トーク」を交わした。親交のある2人が仙台市の文化横丁にある老舗居酒屋「味工房」で、激動の18年シーズンを振り返りながら、今季展望をほろ酔い気分で語り合った。【取材・構成=下田雄一】

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-18年を振り返って一番の出来事は、やはり埼玉スタジアムでの天皇杯決勝(対浦和レッズ)でしょう。クラブ目標の1つであったカップ戦ファイナリストを見事に達成した

平瀬氏(以下、平) あのステージに立てたのは選手、スタッフが頑張ったのはもちろんだけど、勝ち切れない試合が続いたときも声援を送り続けたサポーターの力が大きかったと思う。事実上のアウェーにあれだけの人が仙台から駆けつけて、素晴らしい雰囲気で一体感があった。浦和イレブンがシャーレーを掲げるシーンをピッチで目の当たりにして、屈辱を初めて味わった選手がほとんどのはず。この経験を糧にして、今シーズンを戦えることはクラブにとっても大きな意味があるよね。

-失点こそ多かったが、渡辺晋監督(45)の人もボールも動くスタイルが浸透した1年だった

平 昨年8月15日のホーム湘南ベルマーレ戦。あの試合がナベさんのベストゲームだったと思う。選手たちの「この試合は勝たなきゃ」という気持ちが伝わってきた一番いい試合でしたね。

TAX(以下、T) そういう試合を毎試合見たいね。相手もあってなかなかうまくいかないのがサッカーだけど、特にホームのユアスタでは負けられない。J1からJ2にカテゴリーが落ちるという危機意識というか、実際に落ちた経験を持っている選手たちは覚悟が違うよね。J1昇格をジュビロ磐田との最終戦で逃した経験も同じ。08年から12年ごろのベガルタは、絶対にホーム戦は落とさないという戦い方をしていた。終わりに近づくにつれてみんながヒートアップしていく。最後の最後まで気が抜けない。特に後半30分過ぎは、そういう状況がユアスタにはあったよね。ナベちゃんは究極の理想の戦術があって、それを踏まえてきれいに戦っているイメージだけど、誠ちゃん(元仙台監督でJ2V・ファーレン長崎の手倉森誠監督)はドラマの作り方がすごくうまい監督だと感じた。

-仙台一筋のDF菅井直樹(34)が引退した

T キンちゃん(菅井の愛称)の引退は本当にショックだったね。まだやれたんじゃないかと思うけど、どう? ファンとしては、ああいう終わり方は納得できなかったね。

平 キンも人前で話すことが苦手だし、記者会見を開いてメディアに出たりできないタイプ。本来なら引退セレモニーがあっても良かったし、TAXさんが納得できないのも分かるけど、キンはそういう選手なんです。僕と一緒に働くことになりましたが、話せなくても彼は存在感があるし、少しずつ慣れてくると思いますよ。

T キンちゃんの話になると飲まずにはいられないな(笑い)。平瀬君は現役時代よりも節制しているイメージだよね。

平 昔の選手は普通に飲んでいたけど、今の選手はプロ意識が高くて節制してる。僕も試合の前々日からは飲まなかったですよ。家でも飲まなかったし、奥さんがご飯を作ってくれてサッカーに集中できた。すごく助かりました。

-独身だった菅井は、もしかしたら大変だった?

平 あいつは大変だったと思うよ。

T 本当に大変だったと思うね。どうして早く結婚しなかったのかな。キンちゃんはプレーヤーとして職人だった。あんなサイドバック、歴代でいなかったね。

平 TAXさんはキンちゃん大好きですもんね。

T キンちゃんを追い続けていたから、ベガルタのファンでいられたかも。

平 まだ現役だったとき、選手バスの最後列右側が僕で、キンは左側だった。

-カズシートならぬ「キンシート」ですか

平 今でも忘れないけど、試合が終わってバスに乗ったら、隣のキンが深刻そうな顔で話し掛けてきた。「平瀬さん、僕は点を取れないんですけど、どうすればいいですか?」って。サイドバックの選手がですよ。あれには驚きましたね。

T 前線に顔を出しても、戻るのも速い選手だった。あの運動量は半端なかったよね。あんなに責任感が強い選手はいないと思う。

-新シーズン、移籍した選手もいるが、頼もしい新戦力も加わった

平 長沢(駿=30)はいい補強。高さだけじゃなく、足もとがうまい。FWはみんな自分が点を取ることに集中しているけど、彼は周りを生かすことを常に考えている。

T スペインのレバンテに4年も在籍していた元モザンビーク代表のディフェンダー(シマオ・マテ=30)もいいらしいね。

平 TAXさん、彼は本物かもしれません。スペインではC・ロナウド(現ユベントス)、メッシ(バルセロナ)ともバンバンやりあっていたらしいです。アルアハリ(カタール)との契約が8月で満了してフリーだったと聞いています。強化部はよく見つけたと思いますね。

-FWの組み合わせを考えてもワクワクする

平 阿部(拓馬=31)ちゃんはいいよね。前からプレスして献身的にボールを追いかけてくれるし、ボールを前へ運べる。石原(直樹=34)もそうだけど、前線に頑張れる選手がいることは大きい。長沢が1トップに入って、ハモン・ロペス(29)にジャーメイン(良=23)、そして新加入選手もいる。補強を危ぶむ人もいますが、攻撃力は確実に高まったと思いますね。

◆Monkey Majik(モンキー・マジック)00年に青森県で結成され、翌年から仙台に拠点を移す。06年、フジテレビ系ドラマ「西遊記」の主題歌「Around The World」がオリコン最高4位のヒット。カナダ人兄弟のメイナード・プラント(43)とブレイズ・プラント(38)がボーカルとギターを担当。仙台市出身のTAX(菊池拓哉)がドラムス担当、DICK(40)がベース担当を務める。