鹿島安部は頭脳派アタッカー東京五輪世代注目No1

リラックスした表情を見せる鹿島FW安部(撮影・杉山理紗)

<22日開幕 Jココに注目!(上)>

27年目を迎えるJリーグが22日に開幕する。日刊スポーツでは今日から3日間にわたり、開幕直前企画として今季の見どころを独自の視点で紹介する。第1回は「東京オリンピック(五輪)世代」。来年に迫ったビッグイベントで活躍しそうな、ブレーク必至のニュースターたちに迫る。

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堂安律、冨安健洋ら東京五輪世代で、NO・1注目Jリーガーは鹿島アントラーズMF安部裕葵(ひろき=20)だ。171センチと小柄だが、スピードに乗った縦への突破が魅力のサイドアタッカー。昨年末のクラブ・ワールドカップ(W杯)では強烈シュートで世界に衝撃を与えた。前線の選手が流動的に入れ替わる鹿島では得点量産もありそうだ。

たくましい精神も魅力の1つ。今季から10番を任されたが、「プレッシャーがあるのは感じるけど、僕に影響はない。プレッシャーに小さくなるくらいなら、サッカー選手を辞めた方がいい」と頼もしい。強化担当の鈴木常務も「精神的により強くなり、自覚も出てきた。自分の置かれた状況を客観的に理解でき、やるべきことを見つけられる」と成長に目を細める。

今でこそスター候補だが高校まではほぼ無名選手。プロ入りを勝ち取った裏にはある“頭脳派プレー”があった。高卒でJリーガーになる最短ルートは、夏の総体でスカウトの目に留まること。激戦区の地元東京を避け、4年連続総体出場中の広島・瀬戸内を選んだ。安部が高3時の総体開催地が広島で、出場枠が2枠あることも考慮していた。その第2代表として出場した総体で、居合わせた鹿島スカウトに見初められた。このシンデレラストーリーは14歳の安部が自ら描いたもの。「計算通りです」と笑ってみせた。

口ぐせは「コツコツ」。プロ入り後は、先を見ず目の前のことに集中するスタイルを確立している。五輪の話を振っても「(意識)してない」と言い、「このチームで頑張っていたら(選ばれる)。代表入りたいな、五輪出たいなって、心の裏、奥ではありますけど、表面的なものには全くない」とサラリと答えた。

クールな安部だが、昨年末のクラブW杯でレアル・マドリードに敗戦後はピッチで号泣した。涙の真相は「悔しさもそうですけど、1年間チームメートと一緒に戦ってきて、なんかすごいうれしくて、楽しかったなって。自分が幸せな環境にいるってことで」と明かした。冷静でキレる頭と、熱く強い心。魅惑の二面性をもつ20歳が、今季のJリーグを席巻しそうだ。【杉山理紗】

◆安部裕葵(あべ・ひろき)1999年(平11)1月28日、東京都生まれ。広島の瀬戸内から17年に鹿島入り。同年4月1日の大宮戦でJ1デビュー。昨季はリーグ戦で22試合2得点を記録し、Jリーグのベストヤングプレーヤー賞を受賞。J1通算35試合3得点。171センチ、65キロ。

<東京五輪世代の選手たち>

▼FW前田大然(松本山雅FC) 今季J1昇格した松本の、浮沈のカギを握るストライカー。173センチと上背はないが、50メートル走で6秒を切る加速力が武器。DFのマークを外し、裏へ抜け出して少ないタッチ数でゴールを仕留めるプレーを得意とする。昨年8月のアジア大会でU-21日本代表に選出され、頭角を現した。自身初となるJ1の舞台でどこまで通用するか。

▼FW田川亨介(FC東京) 今季鳥栖から移籍。181センチのがっしりとした体格で、50メートル走は6秒0を誇る。17年5月U-20W杯韓国大会でFW久保とともに飛び級で出場し、以降も選出され続けている。パワフルなミドルシュートと空中戦の強さを生かしたセットプレーからのヘディングを得点源に、自身初の1シーズン10得点を目指す。

▼FW斉藤光毅(J2横浜FC) 攻撃的ポジションならどこでもこなせる器用さがあり昨季は高校2年ながらトップチームデビューを果たした。MF久保建英とは同い年で、飛び級での今年のU-20W杯出場も見据える。昨季は35歳上のレジェンドFW三浦知良と2トップを組んでのプレーも冷静にこなした。さらなる経験を積めばA代表で活躍する日も遠くないだろう。

▼MF久保建英(FC東京) 世代別代表にも飛び級で招集され続けている逸材。17歳ながら開幕前の段階では主力組に入っており、リーグ史上3番目の若さでのJ1開幕スタメンを目指す。ボールタッチやパスのタイミングに独特の感覚を持ち、1人で攻撃に変化をつけられる存在。昨季横浜に期限付きで移籍してフィジカル面も向上。飛躍が期待される。

▼DF橋岡大樹(浦和レッズ) 昨季ユースから昇格を果たし、監督が2度代わった難しいシーズンでも1年目ながら右サイドバックでスタメンを守りきった。空中戦に強く、GK西川からのキックのターゲットになることも多い。世代別代表では本職のセンターバックを務めるなど、複数ポジションをこなせるのも武器。クロスの精度が向上すれば、さらに脅威を与える存在になる。

◆東京五輪メンバー編成 出場可能な登録人数は18人。1997年1月1日以降に生まれた23歳以下の選手が対象。24歳以上の選手が対象となるオーバーエージ枠(OA)は最大3人。OA使用については出場国が決められ、使わないことも可能。