興梠が平成有終弾「名刻めた」カズ並び次は令和初弾

清水対浦和 J1平成最後のゴールを決めた浦和FW興梠はサポーターに手を振って引き揚げる(撮影・松本俊)

<明治安田生命J1:清水0-2浦和>◇第9節◇28日◇アイスタ

平成最後のゴールを決めたのは、浦和レッズFW興梠慎三(32)だった。J1・9節で最も遅い午後4時キックオフのアウェー清水エスパルス戦にフル出場し、1-0の後半ロスタイムに平成通算2万1640点目となるラスト弾を右足で決めた。

J1通算得点数でも、平成を代表するFWカズ(横浜FC)の139点に並び歴代6位タイに浮上。2-0で平成最後の完封勝ちに導き、令和では前人未到の8年連続2桁J1ゴールを狙う。

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平成を締めくくるメモリアル弾を興梠が決めた。1-0で迎えた後半ロスタイム、7分。平成最後の攻撃で右サイドのMF汰木(ゆるき)からのパスを受け、足元にきたGKの動きを見極めてチップキックで決めた。柔らかくゴールネットが揺れ、サッカー界で一足先に平成の幕が下りる。前半から守備に走って完封勝ちにも貢献し「最後は死んでました(笑い)。元気だったら思いっ切り打って外してたかも」。FWには守備も求められる現代を象徴するフィナーレとなった。

それまでの「最ゴール」は後半28分のDFマウリシオ弾。左CKから興梠が放った右足ボレーのこぼれ球を押し込んだものだった。お膳立てで終わるところだったが、最後の最後、90分+7分目に有終の美だ。試合後は「平成最後、取られたぁ」と叫んだDF槙野を横目に報道陣に囲まれた。

「意識してなかったけど名を刻めたことになり、うれしく思う。仲間に感謝したい」。控えめだったが、この1点がカズに並ぶJ1通算139点目になることは前日から「気になっていた」。小学校の時は野球好きで大の巨人ファン。「正直、Jリーグ開幕もカズさんのことも知らないほど疎かった」少年がJリーガーになり、得点を積み上げた中で「尊敬し、抜きたい」と思ったのがカズ。20歳上のレジェンドに肩を並べ「まだ現役。突き放しておかないと」と冗舌になれた。

89年2月26日、Jリーグ前身の日本リーグ。古河電工FW前田秀樹が住友金属戦で平成最初のゴールを決めた。30年たっても「あの得点は鮮明に覚えている」と目を細めた前田氏が指導者になり、育てたのが阿部勇樹や闘莉王。彼らを中心に2度のアジア王者になった浦和のゲーム主将を受け継ぐ興梠が、クラブでは通算90点目。福田正博氏の最多91点にも王手をかけた。

次は5月3日磐田戦。今度は反対に、令和で最も早い午後2時に始まる。父善二郎さんによると「興梠」の名字の由来は「かむろぎ(神呂木)。天皇陛下に仕えてきた家柄」という。その子孫が、天皇の譲位=平成→令和の改元にサッカー代表として立ち合えたのも運命的だった。「次は8年連続だね」。新時代はJ1新記録の8年連続2桁得点が目標になる。【木下淳】