浦和-横浜“誤審”を検証 「運営」発言の真実は…

横浜対浦和 後半、横浜FW遠藤のゴールが、浦和の猛抗議で一度はノーゴールの判定となり、審判を挟んで、浦和大槻(中央奥)、横浜ポステコグルー監督(手前)が入り乱れて猛抗議(2019年7月13日撮影)

Jリーグが自ら制作し、試合中の判定について毎週検証している動画コンテンツ「Jリーグジャッジリプレイ」の最新回が16日、DAZNで先行配信された。

3連休初日、13日のJ1横浜F・マリノス-浦和レッズ戦(3-1、日産ス)で起きた横浜2点目をめぐる誤審を取り上げ、日本サッカー協会(JFA)の上川徹トップレフェリーグループシニアマネジャー(56)が説明。Jリーグの原博実副チェアマン(60)と、FC東京の石川直宏クラブコミュニケーター(38)とともに議論した。

問題の場面は、横浜1-0浦和の後半14分。横浜のFW遠藤が左側から放った右足シュートが、オフサイドの位置にいたファーサイドのFW仲川に当たってゴールネットを揺らした。まずは副審の旗が上がらず得点となったが、浦和側の抗議を受けて中断。審判団が協議の末、いったんはオフサイドとなって取り消された。しかし、9分間の中断をへて再びゴールと認められた。判定が2度も変わったことで騒然となった。

司会を務めたタレント平畠啓史(50)が「二転三転したジャッジについて、何が起きていたのか気にされている方がたくさんいると思います。上川さん、お持ちの情報も含めてシーンの説明していただいていいですか」と求め、検証が始まった。

上川氏は「まず仲川選手がオフサイドポジションにいるのは明らか。副審も認識できている」とした上で「2つの観点で見ないといけない。<1>仲川選手がボールに関与したのか<2>(マークに入った浦和MF)宇賀神選手のプレーを妨げるようなことをしたのか」と切り出した。「副審は<2>はないと判断したが<1>については分からなかった。その中で宇賀神選手が(右)足を上げて(守備して)いたので、はっきりは分からないけれど、宇賀神選手のオウンゴールの印象が強い、と考えたようだ」。つまり最後にボールに触った選手が主審と副審から見えなかったという。その後、審判団が情報を共有してもオフサイドにする確信が持てなかったため「持っている情報でゴールと認めた」と経緯を明かした。キヤノンが提供する「自由視点映像生成システム」も用い、主審と副審の仮想視点も確認しながら解説された。

本題はここからだ。この段階までは“通常の誤審”と言えるが、当日に問題となったのが松尾一主審(46)の発言だった。浦和の複数選手が明かした、松尾主審の「自分では決められない。運営が決めること」。この「運営」について、上川氏はまずオフサイドに変わった理由から説明した。「通常、記録や運営が得点者や警告を受けた選手を確認して(場内や速報で発表して)いるので、最後に触れた選手が分からなかった中、仲川選手であればオフサイドになる。得点者を聞けば解決できると思ったようだ」。第4の審判員が横浜の運営担当者から「仲川」と聞いて主審に伝えたため、いったんオフサイドに判定を覆したという。

しかし、最終的には再び得点と認められた。「この情報は運営からもらったもの。4人の審判団が実際に見たものではない。(ピッチ外が)情報源であれば協議規則上、判定を動かすことはできない。第三者、二次情報を元に判断を下すことはダメだとなって、また戻した」と流れを追った。

内部で映像を見て判断を変えたのでは、という疑念については「ないです」と断言。サイドライン中央に横浜のポステコグルー監督と浦和の大槻監督を呼び、松尾主審が説明したシーンについては「審判が持っている情報で変えたのではなく、変えるきっかけになった情報が外部からのものだと分かったので、申し訳ないが、最初の得点を認めた判断に戻させてください」と説明していたことを、上川氏が代弁した。この場面に関しては試合後、両監督ともに会見で内容を「差し控えたい」として明らかにしていなかった。結果として、審判団はオフサイドと分かっている=誤審を認識しながらも、情報収集の過程が正しくなかったとしてゴールで最終決定した。

「運営が決めること」発言については、上川氏が松尾主審に聞いたところ「監督への説明と同じことを選手にも伝えた」結果として出てきた証言という。運営が決めたのは「得点のジャッジ」ではなく「得点者の情報」で、混乱の中で正確に伝えることができなかったことによる誤解だったようだ。

また、この後に浦和の交代(MF橋岡→MF山中)を認めて成立してしまったことで、前のプレーに戻して判定を変えることができなくなったのではないか、という疑問に関しても「関係ない」とし「次のプレーを再開する前であれば、判定を変えることができると競技規則に書いてある」。交代はプレーの再開ではないため、影響はなかった。このシーンに関する議論はここで終了した。

収録は配信前日の15日に行われた。5月17日の浦和レッズ-湘南ベルマーレ戦(2-3、埼玉)でMF杉岡の明らかなゴールが取り消された「令和の大誤審」に続き、再び大きな話題となっただけに、今回の場面にも番組の大半の時間が割かれて検証された。