鹿島ホーム守りメルカリ身売り 「三方良し」の経営

鹿島ジーコTD(2018年12月11日撮影)

フリーマーケットアプリ大手のメルカリが鹿島アントラーズの経営権を取得することが30日、決まった。

この日、親会社の日本製鉄が保有していた株式72・5%のうち61・6%を、16億円でメルカリに譲渡する契約が結ばれた。日本製鉄、メルカリ、鹿島の3社は都内で会見を開き、鹿島の今後の方針について説明した。

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新しい鹿島が誕生する。17年からスポンサーを務めてきたメルカリが、鹿島の親会社になる。メルカリの小泉文明社長は、父が鹿島のホームタウンである旧麻生町(現在は行方市)出身で、自身もJリーグ発足当時からスタジアムへ足を運んでいたファン。両社はこれまで何度も話し合いを重ねており、ホームタウンを移転せず積極的に地域貢献を行うこと、鹿島の伝統を尊重した経営を順守することなどが、経営権譲渡の決め手となった。

メルカリは6月期の連結決算で7期連続の赤字を計上しているが、これは新規事業への投資を行っているから。資金調達も順調といい、鹿島を子会社化する上で問題がないことは、日本製鉄も精査済みという。

メルカリの小泉氏も「今の経営陣が作ってきたすばらしいチームがある。これまでアントラーズを経営してきた方たちの延長線に、テクノロジーをアドオン(付加)する考え方でいきたい」と説明した。加えて「チーム強化よりビジネスの部分で回してきたい」と、あくまでかじを取るのは、ピッチ外の事象であることも強調した。

具体的に、メルカリが鹿島の親会社となることで、双方にどんなメリットがあるのか。メルカリの主要サービスであるフリマアプリ「メルカリ」やスマホ決済サービス「メルペイ」は、利用者層が20代女性だ。一方で鹿島のファン層は40代男性が多い。両者が異なる利用者、ファンを有していることで、相互の乗り入れが見込まれる。ACL王者鹿島の親会社になることは、企業のブランド力向上にももってこいだ。

一方の鹿島にとっては、メルカリのもつテクノロジーを享受できる。広告を例にあげると、実物と映像を融合させた「プロジェクションマッピング」を使った広告を打ち出すことで、これまで広告を出していなかった企業を取り付けることなどを検討しているという。小泉氏の言葉を借りれば「三方良しの経営ができる」ということだ。

今回の決定には、草創期から鹿島とともに歩み、現在テクニカルディレクターを務めるジーコ氏も理解を示したという。8月中には小泉社長が鹿島の社長に就任する見込み。スポーツ専門の動画配信サービス「ダゾーン」の参入で大きく様相を変えたJリーグが、またひとつ新しい時代に突入しようとしている。【杉山理紗】