「走る湘南」確立、好きだから腹が立つ/曹監督とは

湘南の曹貴裁監督

湘南ベルマーレの曹貴裁監督(50)のパワハラ疑惑が明らかになった。

クラブは12日、神奈川県平塚市内のクラブハウスで真壁潔会長ら首脳陣が緊急会議を開いた。Jリーグは近日中に監督本人を含めてスタッフ、選手らから聞き取り調査を行う。その調査結果が出るまでは自宅謹慎となることが濃厚で、解任の流れが加速することになりそうだ。

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曹監督の指導者としての原点は、川崎Fジュニアユース監督での経験にある。02年から2年間にわたり中学生を指導、教え子には大分FW高山や鹿島MF永木もいた。「みんな練習を楽しみに来ている。楽しそうに来る子供たちを嫌いにさせちゃダメだ」と感じたことを今でも忘れていないという。

12年に湘南監督に就任。資金力に劣るクラブにスター選手はいない。それだけに選手を厳しく鍛え上げ、「走る湘南スタイル」を根付かせた。自身の指導論は、中学生も大人も向き合い方は同じ。「選手は自分を鍛えてくれる存在。怒るときはめちゃくちゃ言うけど、怒っている訳じゃないんですよ。その局面からどうはい上がるかが大事」と熱く語っていた。

湘南への愛が強いがために、ミーティングで新聞記事を手に「お前ら、こんなこと書かれてなめられてる」とハッパをかけ、練習メニューを過酷な走りに変更したこともある。ただ監督を経験したことで「嫌いな人がいなくなった。腹が立つのはあるけど、嫌いとは違う。好きだから腹が立つ」と明かしている。

今回のパワハラ疑惑は、選手への「好き」が高じたゆえのようにも思える。ただ川崎Fで中学生を教えた気持ちを念頭に、受け手の気持ちをもう少しおもんぱかる余裕があれば、こういう事態にはならなかった。