札幌120分激闘準V「エレベータークラブ」が躍進

川崎F対札幌 試合後、悔しそうな表情で準優勝の表彰を受ける札幌福森(右端)ら選手たち(撮影・垰建太)

<YBCルヴァン杯:川崎F3(5PK4)3札幌>◇決勝◇26日◇埼玉

北海道コンサドーレ札幌が川崎FにPK戦の末に敗れ、初の国内3大タイトルをあと1歩で逃した。

前半10分にMF菅大輝(21)が今季初得点で先制。1-2の後半ロスタイム5分にはMF深井一希(24)が同点弾で延長戦に持ち込んだ。延長も一進一退の攻防も、最後はPK戦で明暗を分けた。「エレベータークラブ」とやゆされてきた創設24年目のクラブが、就任2年目のミハイロ・ペトロビッチ監督(62)のもとJ1リーグ2連覇の強豪と激闘を演じ、日本中に名前を知らしめた。

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札幌がクラブ初の日本一を目前に力尽きた。120分を走り戦い抜いた。両チーム合わせてシュート38本。互角の撃ち合いで、リーグ2連覇中の川崎Fを追い詰めた。PK戦での敗戦に、ペトロビッチ監督は「素晴らしいゲームだった。勝利に限りなく近づき、彼らの頑張りを誇りに思う」とたたえた。ただ、結果を受け入れるには時間は少なかった。「なぜ勝利できなかったのか、私自身に何が足りなかったのかを探している」と声のトーンを落とした。

ファイナルの先発には下部組織の札幌U-18出身者が4選手並んだ。前半10分に先制点を挙げた菅、後半ロスタイムに起死回生の2点目を決めた深井。野々村芳和社長(47)が就任した13年から掲げられたスローガンは「北海道とともに、世界へ」。クラブ内では「北海道から、世界へ」の案が挙がったが、「ともに」にした。地元への思いが込められた。この日、道産子2人から生まれた2発は、その取り組みの成果と言ってもいい。それも、まだ実りの途中。先発平均25・73歳は川崎Fより2・09歳若かった。同監督は「足りなかったのは若さゆえの経験だと思う」と認めた。

決勝進出は「エレベータークラブ」の躍進だった。12年にリーグ史上最速&最多4度目のJ2降格。13年の人件費はクラブ史上最低の約3億3000万円。アウェーではベンチ入り18人のところ16人で臨む試合もあった。そんなクラブが、昨季はJ1最高4位、今季はカップ戦ファイナリストまで駆け上がった。

頂点には、そう簡単には立てないと教えられた。試合後のロッカールームで指揮官は「絶対、来年戻ってくるぞ」と、言い聞かせた。表彰セレモニーで笑顔で優勝カップを掲げる川崎Fイレブンの姿を目に焼き付けた深井は「悔しさを忘れないように日々レベルアップして帰って来る」。試合終了まで1分を切り、ラストワンプレーで意地を見せた男は、そう誓った。

ベンチ外の全選手、スタッフ、クラブ全職員が会場に集結し、一丸でぶつかった。MF荒野は「試合に出られない人たちの思いも背負ってプレーした。だから優勝したかった」。今日の悔しさは、札幌が優勝カップを手にした時、晴らされる。【保坂果那】

▽前半10分、右サイドで先制点の起点となったMF白井 最初の仕掛けで得点につながったが、それ以降はもう少し確実に突破できれば良かった。

▽今季初得点の先制ゴールを決めたMF菅 シンプルに悔しいです。早い時間に点を決められ、緊張がほぐれた。

▽1トップで先発してシュートを2本を放ったFWジェイ すごく良い試合をしたが、かなり悔しい。落ち込む暇はない。これから頑張りたい。

▽守備でチームを支えたGKク PK戦では1、2人目が緊張した。3人目から自分の感覚でできた。試合では止められるシュートがあったのでチームに申し訳ない。悔しすぎます。

▽PK戦4-4で5人目として蹴り相手GKに止められたDF石川 蹴るコースは最初から決めていた。後悔がないように蹴ることができたと思う。