ナイツ土屋考案「消しゴムサッカー」ヒットの予感

ナイツ土屋伸之がYouTubeで配信している消しゴムサッカーリーグの全6チーム、66“選手”(撮影・鈴木みどり)

<消しゴムサッカー親善試合:ナイツ土屋1-1日刊スポーツ松尾記者>◇とある部屋のテーブルピッチ

世界でただ1つ、コロナ禍でも中断しなかった? サッカーリーグがある。その名も「消しゴムサッカーリーグ」。人気お笑いコンビ、ナイツの土屋伸之(41)が考案した、机上でゴム製フィギュアを選手に見立てたサッカーで、一部で注目を浴びている。

一体どんな競技なのか。記者がソーシャル・ディスタンス(社会的距離)を守り、たった1人で世界消しゴムサッカー協会(WEFA)会長の土屋を直撃し、親善試合で腕試し。Jリーグ再開が待ち切れないというサッカーファンの皆さんに、その魅力を紹介します。【取材、構成=松尾幸之介】

“本家”に負けない興奮が、そこにはあった。消しゴムサッカー(消しサカ)はサイコロがボール、選手は土屋と同じ40代男性にはおなじみの、懐かしすぎる「キン消し」など。ピッチに見たてた机の上で、11対11で争う。プレーはノック式のボールペンで、スーパーカー消しゴムを走らせた要領で、はじいて行う。ボールを動かしゴールへ迫る点はサッカーと同じ。サイコロの出目が偶数か奇数かで、攻守が入れ替わるルールが鍵となる。

あいさつもそこそこに、土屋が奇数、記者は偶数をチームの出目に決め、いきなり対戦。選手11体を自由に選び30分1本の親善試合が始まった。初体験の記者が、創設者で連盟会長の土屋に挑む-。まるで森保ジャパンが王国ブラジルに挑むようなものだが、サッカー担当記者のプライドがある。絶対に負けられない戦いが、ここにもあった。

完敗覚悟だったが、いつもの仕事と同じ? 決死のプレーが、まさかの展開を生み出す。土屋のキックオフで始まったが、1プレー目で偶数が出てすぐ記者が攻撃。クロップのリバプールのような攻守の切り替えだと自画自賛しつつ、3トップ中央に置いたロックマン消しゴムのロックマンでボールをはじくと、また偶数が出て連続プレー。これはボールを握り続けて、攻撃を仕掛ける全盛期のバルサのティキタカだ! とまたも自画自賛した。

すると2打目でボールをはじいたロックマンの体が偶然、ボールの上に乗った。消しサカではこれを「乗せ」という。乗った選手をボール横に自由に配置できる。シュートチャンスになりやすいことから、この「乗せ」やすさが、消しサカ界のスターの条件だという。どうやら、ジダンのマルセイユルーレットや、カズさんのまたぎフェイントばりの必殺技のようだ。

また偶数が出て、記者の攻撃が続く。失うものは何もない。距離はあったが、思い切ってロックマンでシュート。するとボールは相手DFラインの間をきれいに抜け、ゴール右へと吸い込まれた。開始わずか2分。たった3プレーで電光石火の先制劇。土屋には「(自分が)1プレーしかしていないのに決められたのは初めてです。恐るべし日刊スポーツ」とほめられた。

ただ、この先制点が王国を本気にさせてしまう。06年ドイツW杯1次リーグのブラジル戦で先制ゴールを決め、王国を本気にさせてしまったFW玉田の気分だ…。その後は防戦一方。決定機でのウルトラ怪獣消しゴムGKネロンガーのビッグセーブもあり、相手の「消しサカ界のメッシ」こと同セブンガーに押し込まれ1-1とされたが、何とかドロー決着に持ち込んだ。

プレーしてみると、ルールも精巧で童心に帰った気分で熱中してしまった。土屋の本気度も、人気の理由もよく分かった。土屋は「将来的には、お客さんを入れて見せてもいいと思っています。いつか消しサカのW杯も見てみたい」と語っていた。観客動員の日を待ち望む点は、欧州やJリーグと同じだ! と変に納得してしまった。

今では楽屋などで楽しむ芸人仲間も増え、eスポーツのイベントからも誘いを受けたという。「ちょうど消しゴム(=eraser)なので、これも、もう1つのeスポーツ」と笑わせ、オチをつけるあたりは、さすが人気お笑い芸人。10歳の土屋少年が生み出した遊びは、約30年の時を越え、ヒットの予感を感じさせている。

 

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◆土屋伸之(つちや・のぶゆき)1978年(昭53)10月12日、東京都出身。中学、高校はテニス部に所属し、サッカーは未経験。01年に塙宣之とナイツを結成。ツッコミ担当。08年から「M-1グランプリ」3年連続決勝進出。「THE MANZAI 2011」準優勝。179センチ、78キロ。

<消しゴムサッカーアラカルト>

◆発祥 土屋が10歳の頃、自宅での1人遊びから考案。芸人を志すきっかけとなる大学の落語研究会に入る20歳まで10年間ハマっていた。18年11月のテレビ朝日系「アメトーーク!」の企画で初告白。同時に活動を再開した。

◆必要なもの ピッチは机。推奨サイズは縦90~150センチ×横55~95センチ。ゴールは幅20センチ×高さ5センチ。ボールは8ミリのサイコロ。選手(ゴム製フィギュア)は人型2本脚で幅10センチ以内であれば自作可。ノック式ボールペンは側面ボタン付タイプが良い。

◆リーグ戦 土屋が撮影、編集、実況まで1人で行うYouTubeチャンネル「つちやのぶゆき 世界消しサカ協会」で6チームのリーグ戦を開催中。現在7季目。オールスター戦もある。オフには約1000体のコレクションからの入れ替え(移籍)も実施。

◆スター選手 ウルトラ怪獣消しゴムのセブンガーが「消しサカ界のメッシ」。力強さからキン肉マン消しゴムのウォーズマンが「C・ロナウド」とされている。他に、ウルトラ怪獣消しゴムのギロン人が「リネカー」、同消しゴムのヤプールが「ジーコ」(摩耗による負傷で引退)。土屋が高校1年時に消しゴムをカッターで削って自作した「バッジョ」や、ウルトラマンタロウ消しゴムを削って作った「ペレ」もいる。