川崎F9連勝「ツープラトン攻撃」前後半の質落ちず

後半5分、ゴールを決め抱き合って喜ぶ川崎F三笘(左から2人目)ら(撮影・黒川智章)

<明治安田生命J1:札幌1-6川崎F>◇第10節◇15日◇札幌ド

川崎フロンターレが強すぎる。敵地での北海道コンサドーレ札幌戦を6-1で完勝し、J1タイ記録となる9連勝を達成。勝ち点28も開幕10戦での最多新記録をマークした。

新型コロナの影響で過密日程を強いられる中、鬼木達監督(46)はリーグ再開後から5人に増えた交代枠を全試合で活用。この日も東京オリンピック(五輪)世代のMF三笘薫が2ゴールで公式戦4試合連続6得点、FW小林悠も2得点でクラブ最多得点記録を更新するなど、途中出場組も活躍。前半と後半で質を落とさない「ツープラトン攻撃」で、早くも独走態勢に突入した。

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容赦なく戦い抜いた。FW小林が今季チーム最多の6点目を奪うと、静まりかえった札幌ドームにようやく試合終了の笛が響いた。得点を重ねても攻撃的スタイルを貫き9連勝。ベンチ前で握った両拳を突き上げた鬼木監督は「チャンスがあれば点を取りに行くのは当たり前。止まるのではなく進むのが自分たちの中で正解かなと。選手全員に感謝している」とたたえた。

ルヴァン杯名古屋グランパス戦から中2日で北の大地に乗り込んだ。新型コロナウイルスに移動でも神経をすり減らされる中、アウェーでの連戦。MF大島僚太は出場停止でMF家長昭博もメンバー外。過密日程や蓄積疲労なども考慮し、先発は前節大分戦から6人替わった。序盤こそかみ合わない場面もあったが、20分すぎにリーグ初先発の3トップ右のFW宮代大聖と左のFW旗手怜央のポジションを入れ替えて修正を施し35分に先制。後半は三笘と小林が2得点ずつでJ1史上初の途中出場選手2人の複数得点と、敗北の予兆を見せずに90分間を終えた。

過密日程下でも、前後半で質が落ちない。鬼木監督はJ1で唯一、全試合で5人の交代枠を駆使。10試合計29得点中、前半は相手もフレッシュな中で12点。後半は選手交代でギアを上げ、疲労が見え始めた敵に前半と同じ質の戦いを展開して17点を挙げる。「前半からハードワークをしている選手があっての交代選手。選手間でもこの1試合を勝ち抜くには自分の仕事は何なのかを全員が理解してくれている」。分厚い選手層を持て余さず臨機応変に配し、途中出場選手が10得点と采配の妙も光らせながらのツープラトン攻撃が、圧倒的強さの根底にある。

公式戦13戦無敗。リーグ戦は第4節から首位に立ち9連勝。日増しに強くなる包囲網すら、指揮官は「一泡吹かせようという相手を受け止めて押し切る力は必ずチームと個人の力になる。勝ち続けて記録も気持ちも強くしていきたい」と成長源ととらえる。この先、大黒柱のMF中村やMF長谷川が故障から復帰してくる見込み。死角は見当たらない。【浜本卓也】

<川崎Fの記録メモ>

▼勝ち点28 開幕から9勝1分けの勝ち点28。開幕から10戦以上負けなしはJ1史上8チーム目だが、10試合消化時点で勝ち点28は、現行の18チーム制となった05年以降では13年大宮(8勝2分け)の同26を更新する最多記録。

▼9連勝 開幕戦では引き分けたが、新型コロナウイルスの影響による中断明け初戦の第2節からは9連勝。J1で9連勝以上は史上18チーム目だが、今回の川崎Fのように同一シーズンに90分試合で9連勝は07年鹿島、18年G大阪に並ぶ最多タイ記録。

▼29得点 開幕10戦時点で29得点は06年の自チームが記録して以来、J1で14年ぶり。最多は98年磐田の37得点だが、29得点はJ1史上2位タイ。06年の川崎Fは10戦12失点で6勝3分け1敗の4位だったが、今年はわずか7失点と守備も安定して首位に立つ。

▼10得点 途中出場の三笘と小林がそれぞれ2得点。J1で途中出場選手の2人が複数得点は史上初の快記録。今季は交代枠が従来の3人から5人に増えているとはいえ、29得点中10得点をベンチスタートの選手が決めている。