川崎F史上最速V“交代枠5人”の効果思い知り転機

川崎F対G大阪 優勝シャーレを掲げ歓喜する川崎F鬼木監督(中央)(撮影・江口和貴)

<明治安田生命J1:川崎F5-0 G大阪>◇第29節◇25日◇等々力

川崎フロンターレが、史上最速となる4試合を残しての2年ぶり3度目Vを決めた。終盤は足踏みしたが、シーズン中に10連勝と12連勝を達成するなど、圧倒的な強さで数々の記録を打ち立てた。

就任4年目の鬼木達監督(46)にとって、転機の1つとなったのは、7月のJ1再開1週間前に行った練習試合だった。

コロナ禍での過密日程が考慮され、Jリーグでは今季、選手交代枠が3人から5人に拡大された。どんな影響が出るのか想像できていなかったという指揮官だが、6月27日に湘南ベルマーレと行った練習試合で、衝撃を受けた。

「相手が5人交代して、一気に戦況が変わった。これまでは終盤に2点リードしていればある程度(勝敗が)見えていたゲームでも、これだけ人が変わるとゲームが変わる。これはマズイと思ったが、選手もいるし、逆に言えばチャンスだと思った」

選手もいる-。川崎Fは今季、東京五輪による過密日程に備えて、チーム編成を厚くして取り組んでいたのだ。“交代枠5人”の重要性に気がついた指揮官は再開後、見事な采配で連勝街道をひた走った。「強度の高いサッカーを見せ続けるために、多少よくても、体力が落ちたら次の選手」。前節終了時点で、総得点74点のうち途中出場選手による得点は23点と、史上最多。チーム内得点王のFW小林は13点中8点が、MF三笘は12点中8点が、途中出場での得点だ。選手層の厚さを生かした、鬼木監督の効果的な采配が光った。

庄子春男GMも、鬼木監督の成長には目を見張る。19年シーズンは指揮官のカードの切り方に疑問を抱き、試合後にミーティングをすることもあったが、今年は1度もないという。鬼木監督は「自分の仕事は、決断と覚悟だといつも思っている。後ろ髪引っ張られることなくやれるようになっているのかな」と、監督としての自身の成長に手応えを口にした。頼もしい指揮官が、川崎Fを記録的Vに導いた。【杉山理紗】