4日ルヴァン杯決勝!柏vs東京4つの注目対決

柏ネルシーニョ監督(20年10月24日撮影)

Jリーグ主催のカップ戦で、J1リーグ戦、天皇杯と並ぶ国内3大タイトルの1つでもあるルヴァン杯決勝の柏-東京が4日、東京・国立競技場で行われる。

昨年11月7日に予定されていたが、柏で新型コロナウイルスの集団感染が発生したため延期となっていた。待ちに待った決勝を前に、柏担当の岩田千代巳記者と東京担当の岡崎悠利記者が監督、エース、五輪世代、マスコットと4項目で「対決」した。

■監督対決■

<柏 ネルシーニョ監督>

ネルシーニョ監督(70)は、柏に“強さ”をもたらした。J1昇格1年目だが、ハードワークと闘う姿勢を徹底させ、11年と同様「J1昇格・即タイトル」に王手をかける。コロナ禍の影響で、FWクリスティアーノが半年離脱など負傷者が続出。守備陣では本職センターバックが5人中4人が離脱する緊急事態もあった。だが、指揮官は常に「解決策はチームの中にしかない」「総力戦」と口にし、DF川口、古賀をコンバートし、手元にある人材でやりくりし上位争いを演じた。

昨年11月には新型コロナウイルスの集団感染が起き、自身も感染。リーグ終了後は、感染リスクを鑑み練習試合は行わず、チーム戦術の落とし込みに専念。今季は連戦続きで、時間をかけた全体練習ができなかっただけに「習得の意味での練習を積んでいけたら」。今季の最後を笑顔で締めくくるための準備に揺るぎはない。

<東京 長谷川健太監督>

東京は長谷川健太監督(55)に優勝を託す。18年に就任すると、2年目の昨季はリーグでクラブ歴代最高の2位まで押し上げた。今季はシーズン途中でDF室屋、MF橋本と日本代表の主力がそろって海外挑戦で流出した。戦力ダウンが否めない中、大卒1年目のMF安部ら若手を強気に起用。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)では決勝トーナメント進出を果たすなど、着実にチーム力を向上させた。

ルヴァン杯では準決勝で川崎Fを2-0で破り、地力の高さを見せた。ACLから帰国後は「ルヴァン杯にいい状態で戦えるように持っていく」と、残るリーグ戦2試合をこなしながら先を見据えた。G大阪時代には日本人監督初の国内タイトル3冠、今季はJ1通算200勝も達成した勝利請負人が、チームを頂点に連れていく。

■エース対決■

<柏 オルンガ>

柏の得点源といえばFWオルンガ。リーグ戦では出場32試合28得点でMVP&得点王に輝いた。チームの得点の大半がこのエースから生まれた。193センチの長身ながら、抜群のスピードを持ち、裏に抜ければもうだれにも止められない。足下の技術も高く、アシスト役にもなるため、FWクリスティアーノ、江坂の得点も増えた。ロングボールの競り合いからも好機を演出し、まさに前線の大黒柱だ。

ケニア出身。文武両道を掲げ、名門のケニア技術大に進学し地理空間工学の工学士を取得。ハンドボールのU-17ケニア代表として試合に参加した経験もある。リーグで得点を重ねても「ワーキング・ハード」を信条に謙虚さを貫き、日本文化に学ぶ奥ゆかしさもある。オルンガのハードワークと爆発力がチームをタイトルに導く。

<東京 永井謙佑>

東京のエンジンである快速FW永井謙佑が攻守でチームをけん引する。チームが得意とする速攻では得点だけでなくつぶれ役も担う。守っても前線からの激しいプレスで先鋒(せんぽう)隊を務めるなど、チームに欠かせない存在だ。アジア・チャンピオンズリーグでダブルエースのFWディエゴ・オリヴェイラが負傷し出場が不透明なこともあり、永井に求められるものは大きい。「先頭にいる僕が動かないとチームに勢いが出ない。スイッチ役や得点にはこだわる」と、自覚も十分だ。

17年に名古屋から加入して以降、リーグでは得点した試合でここまで18戦負けなしという不敗神話が続いている。長谷川監督も「チームの象徴」と表現するなど、信頼は厚い。まずは先制点で勢いをつけたい。背番号11を先頭に、チームが悲願に向けて加速する。

■五輪世代対決■

<柏 古賀太陽>

下部組織から柏で育ったDF古賀太陽(22)は、最終ラインの要に成長した。コロナ禍の過密日程にもかかわらず、リーグ戦ではチームトップの33試合で先発。出場時間も2969分と、エースのオルンガ、江坂を上回った。

サイドバック、センターバックも務め、フィード力と1対1の局面でも強さを発揮。開幕前は、東京五輪に「当落線上。このままでは厳しい」と話していたが、1年延期になったことで、試合に出続けユーティリティー性もアピールした。

昨季から柏の下部組織で育った日本代表DF酒井宏樹(マルセイユ)DF中谷進之介(名古屋)が背負った「4」を受け継いだ。「期待を寄せてくれていることに感謝しかない。プレッシャーをいい形でパワーに変えられている」。先輩の背中を追い、日本代表へ駆け上がるためにも、堅守を貫きチームにタイトルをもたらす。

<東京 安部柊斗>

今季の東京を支える若手の1人がMF安部柊斗(23)だ。明大から加入したボランチは1年目で主力の地位を確立した。身長171センチと上背はないが、球際で激しくやりあえるファイター。アジア・チャンピオンズリーグでも海外勢を相手に当たり負けせず「こういう舞台で戦えないと、代表には入れない」と自身に課すものも高い。無尽蔵のスタミナで、1試合の走行距離が12キロに及ぶことも。東京の中盤を支えるハードワーカーだ。

12月、初めて東京五輪世代のU-24(24歳以下)日本代表候補合宿に招集された。シーズン中からA代表と兼任する森保一監督(52)が名前を挙げて注視していることを明かすなど、国内組で期待を寄せられる1人だった。闘志あふれるデュエル(球際の攻防)に加えて安部自身が「得点に絡みたい」と重要視する攻撃参加が、東京の得点力を押し上げる。

■マスコット対決■

<柏 レイくん>

柏のマスコットは「太陽の王子」をイメージしたレイくんだ。チャームポイントは王冠。好きなものは「黄色」との理由でカレー。そのほか、サッカー、サポーターも大好きだ。太陽も好きなだけに、苦手なものは「雨と寒いところ」を挙げている。10年8月には、柏市から特別住民票が発行され、日立柏サッカー場の住所で特別住民登録。17年には柏市の原動機付自転車(50cc以下)のナンバープレートデザインにも採用された。市民から愛されるレイくんは、太陽のようにタイトルへの道を照らすべく声援を送る。

<東京 東京ドロンパ>

東京のマスコットは、南区麻布狸穴(まみあな)町で生まれた、たぬきの男の子「東京ドロンパ」だ。六本木や東京タワーが近く、まさに生粋の“都会っ子”だ。知らぬ間に姿を見せたかと思えばドロンといなくなることから、いつしか「東京ドロンパ」と呼ばれるようになった。サッカーを初めて観戦したのはルヴァン杯前身の04年ナビスコ杯決勝の東京-浦和戦。PK戦の末に勝利した東京のファンになった。マスコットに就任した09年にも同杯で優勝した。縁起のいい大会で、3度目の優勝は目前。背番号1068が選手を後押しする。