<明治安田生命J1:柏1-2湘南>◇最終節◇5日◇三協F柏
レイソル一筋20年の男が、最後のピッチに立った。
1-2で迎えた後半29分。追い上げムードの中、その時はやって来た。「大谷秀和」。最後のコールが響くと、スタジアムは割れんばかりの拍手に包まれた。
5月29日以来の出場。大谷は赤色のキャプテンマークを左腕に巻き、チームメートへ指示を送る。背番号「7」にボールが渡ると、ひときわ拍手の音が大きくなるが、冷静にパスに徹した。1点を取るために、芝を駆けた。
しかし、その1点が遠かった。試合終了の笛が鳴る。得点は奪えなかった。だが、さわやかな表情で相手や仲間と握手を交わし、ファンに手を振った。16分のラストピッチ。チームの中心で輝いた。
試合後のセレモニー。真剣な表情で、1つ1つの言葉を丁寧に紡いだ。
「3度の苦しい降格。皆さんには悲しい思いをさせてしまいましたが、皆さんと勝ち取ったリーグ優勝、ナビスコ杯や天皇杯といったタイトルは、その瞬間、その瞬間を、はっきりと覚えています。皆さんがいてくれたからこそ、取ることができたタイトルです」
日が暮れた日立台のピッチ。柏サポーターはもちろん、湘南サポーターも、大谷の声に耳を澄ませた。冷たい風を浴びながら、言葉に熱を込める。
「何か特別な才能があるわけではなかった自分が、プロとして戦い続けることができたのは、皆さんの熱く、温かいサポートがあったからです。皆さんの応援が支えになり、自分を奮い立たせてくれたと感謝しています。本当に、本当に、ありがとうございました」
よどみなく言い切り、サッカー人生を支えてくれたサポーターへ、何度も感謝を伝えた。
セレモニーを終えると、リラックスした表情で会見場に訪れた。「20年も続けられた要因は?」という問いに、笑顔で告白した。
「僕は2、3年で辞めると思っていたので。ここまでは想像していなかった」
想像しなかった20年という月日。苦笑いを浮かべながら、続けた。
「勝ちたいという思い、うまくなりたいという思い、サッカーを始めた頃と変わらない思い。勝つ喜びを知っているから、また味わいたい。向上心を持って取り組んできたことが、今ここにつながっていると思います」
勝ちたい。うまくなりたい。その思いはラストピッチでも体現されていた。
引退後の道は、もう決めている。はっきりとした口調で言った。
「来年は柏レイソルでまたお世話になる。将来のビジョンとして、まずは指導者を目指したいと思います」
柏のレジェンドの求道は、これからも続いていく。