<J1消滅の真実:磐田編(上)>
来季のJ1から静岡県勢クラブが史上初めて姿を消すことになった。今季はジュビロ磐田が最下位で清水エスパルスが17位。初の「ダブル降格」となった。2クラブの降格は直近の10年間で計5回(磐田が3回、清水が2回)。99年チャンピオンシップで日本一を争った2チームがなぜ転落したのか。連載「J1消滅の真実」磐田編の初回は、低迷を招いたフロントの失態について考察する。
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京都との今季最終戦後に行われたセレモニーで磐田の小野勝社長(64)は謝罪の言葉を繰り返した。その場で辞意を表明すると、スタンドから拍手が起こった。在任4シーズンで2度目の降格。サポーターの反応は不思議ではなかったと思う。
今季の目標は残留だった。伊藤彰前監督(50)も始動時の1月に明言していた。最低限の目標を達成するためにフロントは十分なサポート体制を取れていたのか-。その点では疑問が多い。
今夏の補強が象徴的だ。得点力不足は明白で補強ポイントはFW以外考えられなかった。小野社長も「予算は準備していた」。実際にはJ1所属のFW2選手に触手したが、契約には至らず。「交渉力」のなさを露呈する結果になった。
最大の失態は監督の電撃交代だろう。8月の浦和戦でクラブ最多タイとなる6失点を喫すと、事態を重く見たフロントは指揮官を解任。同社長は「カンフル剤を入れる必要があった」と説明したが、現場との思いに相違があった。今季は伊藤監督のもとで土台を作るシーズンと位置付けていた。選手もその覚悟で戦っていた。何があっても監督は代えない、というのがフロントと現場の共通認識。「約束」と違う決断に選手は戸惑った。
次第にフロントへ不信感を抱くようになり、クラブとしての一体感も薄れていった。後任の渋谷洋樹監督(55)はリスクを回避する「残留仕様」にマイナーチェンジしたが、戦い方のベースは伊藤前監督と同じ。監督交代後のチームの変化を明確に答えられる選手もほとんどいなかった。
10月中旬には過去の失態も明るみに出た。20年に加入したFWファビアン・ゴンザレス(29)との契約規則違反が発覚。FIFAから来季の補強禁止を通達された。クラブはスポーツ仲裁裁判所に提訴しているが、裁定が下される時期は不明。今月6日には渋谷監督の退任を発表したが、後任の人選も難航している。
補強もできず、現有戦力だけでチームを立て直せる手腕を持った監督を選ぶのは容易ではない。今季はフロントの責任者と現場のトップ2人がクラブを去る最悪の結末でシーズンを終えた。J2降格の責任を取ったが、白紙に戻ったクラブには「負の遺産」だけが残った。【神谷亮磨】
◆FIFAからの制裁 <1>ファビアン・ゴンザレスはタイのクラブへの約5万ドルの賠償金支払命令。なお、磐田は当該支払義務を選手と連帯して負う<2>ファビアン・ゴンザレスは4カ月間の公式戦出場停止<3>クラブは今後2回の選手登録期間(2023年第1および第2登録期間)における新規選手登録の禁止※ユースからのトップ昇格と、期限付移籍中の選手が移籍期間満了に伴いクラブに復帰する場合は対象外<4>U-18、U-15、ジュビロSS、サッカースクールにおいて、来年度に新規入団する新高校1年生、新中学1年生、新小学5、6年生は来年1月から23年12月までの間、日本サッカー協会への登録が必要となる大会・活動への参加が認められない。