【山形】相田健太郎社長「昇格を最低限にしなければダメ」来季への思い語った

10月23日、今季最終節のセレモニーであいさつする相田社長

来季こそJ1へ-。J2山形は就任2年目のピーター・クラモフスキー監督(44)のもと、今季リーグ戦は17勝13分け12敗で6位。J1参入プレーオフ(PO)に進出したが、4位熊本との2回戦で敗退し、8季ぶりの再昇格を逃した。

「モンテディオ山形 未来を懸けて」第3回は、相田健太郎社長(48)に今季の総括や来季への思いなどを聞いた。【取材・構成=山田愛斗】

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無念の終戦となった。山形はアウェーでのPO2回戦で熊本と2-2のドロー。リーグ戦上位チームが引き分けでも勝ち上がれる規定があり、リーグ戦終盤からPOを含め、公式戦7戦無敗(3勝4分け)で今季を終えながらも、J1復帰の目標はついえた。

相田社長 目標(昇格)が達成できなかった意味では「残念だったな」というのが率直な感想ですね。事業がどうこうよりも、プロスポーツクラブである以上は上を目指さないといけない。それを目指すために、事業を毎年拡大し、強化に投資しているので、ひとつの目標であった部分に到達できなかったのは、すごく残念でした。

20年に石丸清隆氏(J3愛媛監督)が監督に就任したのを機に、自分ら主導で、パスをつないで相手ゴールに迫る攻撃的なスタイルを志向するようになった。

相田社長 受け身のサッカーをすることは状況によって必要です。ただ「いざ攻めましょう」というときに、そのスタイルを持っていないクラブになってしまうと「上に上がりました」というときに「またスタイルを変えるんですか?」となるのは何となくナンセンスだと。どうせやるからには自分たちからしっかり仕掛けられる方がいいと思いました。

昨季の山形はスタートダッシュに失敗。開幕9試合で1勝4分け4敗と低迷した石丸監督を昨年4月に解任。同5月、J1横浜ヘッドコーチ、J1清水監督などを歴任したクラモフスキー監督が就任した。

相田社長 彼は石丸さんがやっていたことをよりシンプルにしていったというか、もう少し発展的にできるようにしてくれたというか…。今の進度でいうと、いいペースで来ているなと思っています。

今季は攻撃的なサッカーが浸透。さらに守備も機能した。得点はリーグ4位の「62」、失点が3位の「40」と攻守で安定。得失点差「22」は2位だった。11月17日にはクラモフスキー監督の続投が発表された。

相田社長 「チームがPOに行ったから続投か?」と聞かれると、決してそうではありません。今回は「我々がここまで行きたいな」というところに、ちゃんと持っていってくれたことが、今年の監督に対する一番の評価ですし、いい意味でポジティブに回してくれることを期待し、それで続投をお願いした形です。

今季の売上高は過去最高の21億3400万円を見込む。20億円超えはクラブ初。サポーター目線では来季の強化費増に期待が高まるが、「無理はしても、むちゃはしない」と、あくまでも堅実経営に重点を置く。

相田社長 「売り上げが上がったから単純に強化費に回るか?」というと、そうではなく、今年で7・8億円を強化費に使ってますが、来年も落とさないことが重要です。8億円を使ってチームづくりするのが最低限で、いろいろな形で生まれたお金は、できることならチーム強化にあてたい。だが、選手たちだけでなく、フロントの強化もしないといけないですし、そっちの人件費も厚くしないといけないと思っています。

チームの骨格を維持することが、今オフ最大のテーマだ。

相田社長 基本的には僕らもそうですけど、J1の降格争いに参加してしまうレベルのクラブと、J2の昇格争いに加わるクラブのところって一番いろんな意味で選手の出入りが激しくなると思っています。ここの出入りをどれだけ少なくするかがすごく大事で、基本(チームに)残る選手を多くしたいのはあります。

選手にとって好条件のオファーが他のクラブから届けば、主力でさえもしっかりと話をして、本人のためになる移籍ならば後押しするのが山形のスタンスだ。

相田社長 移籍することでチャンスになる、その子の人生にとっていいのであれば、行かせてあげるべきだと当然思っています。それを無理して引き留めて「その子が残ったことによって不幸でした」とクラブの都合による引き留め方はやりたくないんですよね。引き留めるのなら本人にとっても絶対にいいという自信と覚悟がクラブにないとダメだと思います。

直近では汰木康也(J1神戸)、坂元達裕(ベルギー1部オーステンデ)、山岸祐也(J1福岡)、中村駿(同)、熊本雄太(同)、山田康太(J1柏)らが山形でブレークし、ステップアップを果たした。

相田社長 やっぱり認識しないといけないのは、J1クラブの平均的な会社の売上は40億とかですから。僕らの倍ですよね。僕らが例えば1000万円を出している選手に、J1から2000万円のオファーが来て「僕らが2000万を出せるか?」と言われたら、そうじゃないです。むしろ、ある意味そこで得られる評価もクラブとしてはあって「山形に行けば上にいける」「チャンスがもらえるクラブに行ける」という評価を僕らが得られれば、若くて有能な選手、才能のある選手が来てくれると思うので、それはそれで良いと思っています。

来季は優勝のみを見据え、J1復帰を目指す。

相田社長 もともと今季は「2位以内に入って昇格できたら」と臨んだシーズンでした。そういう選手がそろってくれたのも当然ありますし、すごく残念だったんですが、「やっぱり優勝しないと意味がないんだな」と、すごく感じています。来年は「優勝」という言葉を第一に、結果として2位だろうが、プレーオフだろうが、「昇格を最低限にしなければダメなシーズン」だと、(社長就任から)ようやく4年たって自信を持って話せるレベルになってきている気がするので、来年はそこを目標にしたいと思っています。

◆相田健太郎(あいた・けんたろう)1974年(昭49)5月4日生まれ、山形県南陽市出身。伊奈学園総合、東洋大ではサッカー部。98年4月に毎日コムネット入社。03年1月からはフットボールクラブ水戸ホーリーホックへ。07年1月に楽天野球団に入社し、セールス&ディベロップメント部部長など歴任。17年6月には同球団から楽天ヴィッセル神戸へ出向し、強化部部長兼スカウト部部長、戦略室室長などを務めた。19年1月にモンテディオ山形の社長に就任した。