元中学教員で水戸ホーリーホック普及コーチの佐藤直也さん(27)が30日、3月末までの勤務先である東京・練馬中でキャリアに関する講演を行った。
大学卒業と同時に幼い頃からの夢だった教育の道に進んだが、一念発起してプロのサッカークラブで働くことを決意。異色のキャリアを歩む。「より多くの人の人生をより豊かにする、夢や希望を与える人間になりたい」。サッカー指導者としての熱意や、教員生活で培った話す能力を生かし、「自分にしかできないこと」という軸で転身を果たした。
水戸のサッカースクールでコーチをしつつ、クラブのスタッフとしての業務もこなす忙しい日々。そのキャリアに注目した練馬中の元同僚からのオファーを受けて、「総合」の授業の一環で中学1年生約160人の前に立った。
伝えたかったことは「選んだ道は全て正解。考えたことにまっすぐ生きていってほしい」。
人工知能(AI)が人類の知能を超えるといわれている2045年のシンギュラリティなどを例に、12、3歳の生徒たちに「あなたは将来、仕事を選ぶときに何を大切にしますか」と問いかけた。
自身のキャリアチェンジの経験を交えて生徒に訴えかける。ボロボロの橋と頑丈に舗装された橋のスライドを用いて「みんなならどっちを渡りますか?」と。
生徒からさまざま声が上がるなか、佐藤さんは「橋を渡るだけなら絶対に安全な方を選ぶ。でも、渡った先にどういう自分でいたいかを考えました。正直、先生の頃よりお金はもらっていないけど、目先のお金のことは考えずに水戸ホーリーホックを選びました」と伝えた。
講演最後に「あなたは将来、仕事を選ぶときに何を大切にしますか」と再び問うた。「人それぞれ価値観は違います。でもこれって『どんな人間になりたいですか』っていうことだと思います。『サッカー選手になりたい』じゃなくて『サッカー選手になっていろんな人を喜ばせたい』というように」。
教員という安定を捨てて、J2のサッカークラブへ-。サッカークラブとして地域に根ざした活動を続ける水戸の魅力にひかれ、一度も住んだことのない地でチャレンジを始めた。「今日話したことが、少しでも何か将来のきっかけになったらうれしいです」。
半年前まで教壇に立って話していた頃を思い出した。「みんながどんな経験をして大人になるのか楽しみ。めちゃくちゃ楽しかった。授業をやっていたときよりもより聞いてくれた気がします(笑い)。将来のことを考える子どもの顔もよかったし、雰囲気がグッと深まっていく瞬間がよかったです」。多感な生徒たちが「職業選択」というそう遠くない未来に訪れる出来事に、自分事として向き合っていた。
手応えは十分だ。講演後、元同僚の先生方からは「若い人が夢や希望を語ることはとても意味がある」と言葉をかけられたという。「もっともっとこういうことを広げていきたいです。自分のキャリアだから伝えられることを一番に考えて、たくさん還元していきたいです」。講演後には、3月まで担任を受け持っていた卒業生が、佐藤さんの来校を聞いてかけつけた。生徒からも同僚からも愛される佐藤さんの挑戦はまだまだ始まったばかりだ。【佐藤成】