<ルヴァン杯:浦和1-2福岡>◇決勝◇4日◇国立
アビスパ福岡が、浦和レッズに2-1で競り勝ち、クラブ史上初のタイトルを手にした。
今季から主将に就任したDF奈良竜樹(30)は優勝を告げるホイッスルが鳴った瞬間、ピッチにうつぶせになり男泣きをした。とどめなくあふれる涙。しばらくして立ち上がると、MF井手口らチームメートが、次々と抱き締めに駆けつけた。
闘志あふれるセンターバック。激しい球際、デュエルが持ち味のプレースタイル故、接触で相手に負傷をさせてしまうこともある。過去には、プレーを巡り、SNSで自らはもちろん、家族までも誹謗(ひぼう)中傷を浴びたこともあった。
この日は奈良の母をはじめ、家族が総出で応援に駆けつけてくれた。「うちの母も北海道から来てくれた。“奈良”と検索したら、いろいろ大変なことが出てくる選手の親族で…。いろいろ迷惑かけたこともあったし、つらい思いをしたこともあるだろうし。それでも常に支えてくれて自分の味方でいてくれた。そういう人たちの前でプレーできて優勝できたのは、涙が出てきた1つの要因かな。やっと、いい奈良のニュースをお届けできてうれしいです」と万感の思いを口にした。
今季から、MF前からバトンを受け主将を務めた。中学時代以来の主将。「チームで孤独になってもいい」と覚悟を持って主将マークを巻く。練習でも、試合でも気が緩んだ選手には厳しく叱咤(しった)。「言っているヤツがやらないと説得力ないし。そこも含めて、模範になって」。孤独を覚悟した“主将”も、タイトルを取った後は、奈良の周りにチームメートの輪が出来た。「孤独を感じずにここまでやって来られた。周りが僕を孤独にしなかっただけで。そういう意味でも、感謝しかない」と話した。
リーグ戦では10月20日の川崎フロンターレ戦、10月28日の横浜F・マリノス戦と2戦連続で4失点を喫していた。その中で迎えた決勝。前半5分に先制し、前半終了間際にも追加点。後半14分にPKを獲得し、楽勝ムードになる3点目のチャンスが来たが、チーム最多得点のMF山岸裕也がまさかのPK失敗。後半22分には1点差に詰め寄られた。
「1点返された時は、簡単に勝たせてくれないんだな、と思いながら。逆に、ここからはアビスパの時間になるなと感じた。頭のスイッチをポジティブに変えながら」。終盤に、浦和FWホセ・カンテのシュートが奈良の股下を通りゴールマウスへ。ポストに当たり九死に一生を得た。「股だけは抜けないようにと思ったら、キレイに股を抜けた。ウワッと思ったらポスト。そこも含めていい風に転んだ」と振り返る。
決して順風満帆なサッカー人生ではない。川崎フロンターレ在籍時の16年5月、リオデジャネイロ五輪の代表が見えた矢先に、左脛骨(けいこつ)を骨折し、長期離脱をした。20年に鹿島アントラーズに移籍も、多くの出場機会を得ることが出来なかった。「いいことも悪いことも含めて、全部の経験が糧になっている。それがあったから今がある。けがをしてなかったら…とかは考えないし。それが自分の人生」。
試合後には、川崎Fのチームメートから続々と祝福のメッセージが届いた。今でも古巣のチームメートに愛されている証拠だ。
21年から所属する福岡で、主将として、守備リーダーとして歴史を刻んだ。「J2からJ1、チームが少しずつ右肩上がりで成長できている。その力になりたい思いでやっている。もっと若い選手がどんどん、中心になって活躍できるようにサポートしたいなと。自分ももっと成長したいですけど、それ以上に、そこが今のやりがい。自分の新たなチャレンジだと思っています」。闘志あふれる奈良主将が、福岡をまた新たなステージへと導く。