<明治安田J2:いわき2-1今治>◇9日◇第1節最終日◇ハワイアンズスタジアムいわき
元Rマドリードで、スペインのレガネスBからJ2今治に完全移籍で加入したMF中井卓大(22)が、Jリーグデビューした。開幕いわき戦にボランチで先発し、プロとして初めて日本のピッチに。後半42分までプレーしたが、悔しい黒星発進となった。
元日本代表監督の岡田武史氏(69)が会長を務めるクラブに7月、電撃入団。スペイン一筋12年の逸材が再起のため国内に帰り、J初戦を迎えた。日本に帰ってきた神童。今治MF中井が22歳にして日本デビューした。
開幕いわき戦に2ボランチの右で先発し、母国の芝を踏みしめた。試合は序盤から、走力に優れるホームいわきに押し込まれる。最終ラインに吸収され、ボールタッチは1回。幼少時からレアルで磨かれた足元の技術、視野の広さを見せることはできなかったが、機を見て中盤の底から攻め上がった。
前半35分、左ボランチが猛然と右サイドに寄せてボールを拾うと、一気に持ち上がる。パス交換でマークを置き去りにすると、右サイドの最も深い位置まで切りこんで、右足クロス。わずかに味方の頭を越えたものの、前半わずかだったチャンスの1つを演出し、サポーターから「たくひろっ! ピピッ!」のコールで鼓舞された。
後半は開始早々に2失点し、劣勢に。FWエジガルジュニオのPKで1点を返し、中盤をダイヤモンドにした底に中井が入ると、ボールに触る回数も増えた。CKからU-21日本代表FW道脇豊と競り合ったり、相手を背負った36~37分には華麗なボールキープでスタンドを沸かせたり、要所で輝きは見せた。
まだ運動量も含めて日本に慣れる時間は必要そうだが、アベル・モウレロ監督からは「音楽を演奏しているようだった」と連係を称賛された。
悔しくも、念願の日本復帰だった。バルセロナで育ったMF久保建英とともに「神童」として知られ、自身は「白い巨人」Rマドリードの下部組織に9歳で、日本人初の選手として加入した。22-23年にはレアルBチームのカスティージャ(3部)に昇格するなど順調だったが、負傷と期限付き移籍を繰り返す。伸び切れず21歳になっていた25年6月でレアルを退団した。
昨季はスペイン5部のレガネスBでプレー。「日本にも魅力を感じている」と語り、帰国して1人で自主トレしていたが、今治の北海道・室蘭合宿に誘われて7月11日から練習生に。日本の速さや強度に慣れて契約をつかみ、約1カ月後の開幕スタメンを確保。試合中はスペイン人のモウレロ監督の指示を代弁もした。
愛称を盛り込んだ「中井卓大ピピ」を正式な登録名にしたことで規約をクリアし、ユニホームに「PIPI」と入れた。「日本で初めてプレーするので、自分らしさを出してJ1昇格という目標へ全力」とコメントしていた天才がベールを脱ぎ、日本で再起の第1歩を踏み出した。【木下淳】
◆中井卓大(なかい・たくひろ)2003年(平15)10月24日生まれ、滋賀県大津市出身。アスール滋賀からRマドリードのカンテラ(下部組織)入り。負けず嫌いでピーピー泣いていたため「ピピ」の愛称となった。“白い巨人”レアルのフベニールB(17歳)、A(19歳以下)からトップの手前、リザーブチームのカスティージャまで昇格。世代別日本代表は18年にU-15で初招集。22年のU-19にも選ばれた。至宝、神童と期待も23年以降はスペイン3~5部で苦闘した。利き足は右。182センチ、73キロ。