<天皇杯:横浜2-0広島>◇決勝◇1日◇国立

 俊輔が、ついにタイトルをつかみ取った!

 横浜が広島を下し、21大会ぶり7度目の頂点に立った。前半17分に日本代表FW斎藤学(23)が先制ゴールを決めると、4分後にはDF中沢佑二(35)が頭で押し込んだ。MF中村俊輔(35)はCKで2点目の起点となり、最終節でリーグ優勝を広島にさらわれた悔しさを晴らした。

 中村の左足を起点に、優勝をグッと引き寄せる得点が生まれた。1-0の前半21分、中村の左CKをMF中町がヘディングすると、広島GK西川ははじくのが精いっぱい。クリアボールを、今度は中沢がジャンピングヘッドでたたき込んだ。「楽しくやって終われればいいと思っていた。だから、今日は普通のプレーができた」と中村。試合終了時、両手の拳を握り、小さくガッツポーズを作った。

 自らの発案で、昨年から試合前のロッカールームでは音楽を流した。最近のヒット曲に加え、30歳以上の選手にも配慮し「懐メロ」も挿入。CHAGE&ASKAの曲が流れると、アラフォーの中沢が「いいねえ!」と気持ちを高ぶらせた。この日も気分を高ぶらせてピッチへと駆けだし、前半に2点を先取して試合の主導権を握った。

 試合後、中村はメンバーの先頭に立ち、赤いじゅうたんを歩いて国立のメーンスタンドを上った。日本協会名誉総裁の高円宮妃久子さまから黄金の天皇杯を手渡されると、頭上に突き上げた。元日の夕日の光を浴び、笑顔を見せた。「優勝はうれしいけど、リーグ優勝の方がいい。でも悔しさを晴らすのが来季ではなく、すぐ目の前に挑戦する場があった。こういう形で終われて良かった」。

 先月10日のJリーグアウォーズ(表彰式)では、リーグ優勝した広島の選手たちを直視できなかった。「いい景色じゃない。面白くない」。勝者に敬意を払う一方で、心の中は仲間と立つはずの舞台に立てなかった悔しさが渦巻いた。あれから22日。聖地で得た雪辱の機会で快勝し、ライバルの姿を眼下に見た。

 14年はACLもある中で、再びリーグ優勝に挑戦する。「若い選手も出てきている。自分も負けないようにしないと」。新年早々、悲願のタイトルを手にし、中村は気分も新たに新シーズンに臨む。【由本裕貴】

 ◆横浜F・マリノス

 前身は1972年(昭47)創部の日産自動車サッカー部。95年にJ1、01年にナビスコ杯を初制覇し03、04年はJ1で2連覇。93年のJリーグ開幕後、初めての天皇杯制覇に。マリノスとはスペイン語で「船乗り」。本拠地は日産スタジアムとニッパツ三ツ沢球技場。