選手主導で守備再建プレスよりハリル遺産のブロック

日本対パラグアイ 前半、先制点を許し、険しい表情を見せる、右から柴崎、昌子、1人おいて植田(撮影・江口和貴)

<国際親善試合:日本4-2パラグアイ>◇12日◇オーストリア・インスブルック

 西野ジャパンの守備に、わずかに光が差した。2失点したものの、パラグアイ戦を前に選手主導のミーティングでブロックを形成する守備の方針を固めたことが判明。8日スイス戦(ルガノ)で前線から積極的なプレスを仕掛けて空転した反省を生かし、西野朗監督(63)が選手の意見を尊重して方向性を打ち出した。

 守り方がはっきりしていた。開始直後から激しくプレスをかけ、前線から相手DFを追い込む。しかし、15分を過ぎたあたりから両翼の乾と武藤が自陣まで下がった。しっかり下がってブロックを形成。1トップの大迫が孤立してチーム全体も疲弊したスイス戦を糧に、守備時は2トップのようになって、コンパクトにゴール前を固めた。セットプレー崩れから2点を失ったが、流れの中では破られず。ワールドカップ前、最後の試合で一定の手応えをつかんだ。

 試行錯誤を続けてきた西野ジャパン。10日夜に選手だけでミーティングし、11日朝、選手の総意を西野監督が受け止めた。同日の会見で「午前のミーティングで、チームとしてディフェンスに関しての統一を話した」と明かしたように、約束事を決めた。長谷部主将も「ここに来て(方向性が)スパッと出てきた」と話し合いの成果を口にした。

 正直な指揮官は「3ラインのポジショニングを修正しないといけない」と言った。ここに選手の話を総合すると、とりでのように守備ブロックを作り、相手をはね返すプランに統一された。昨年11月の欧州遠征。ブラジルに完敗(1-3)した後、ベルギー戦(0-1)で一定の結果が残せた守備ブロック。当時のハリルホジッチ監督が高く評価していた守備を“遺産”として相続し「奪いにいく、いかないのメリハリをつけた」(槙野)と改良した。

 8日のスイス戦はプレスで自滅。最前線の大迫が「あのやり方だと30分で死ぬ」と悲痛な叫びを上げた。その大迫も11日の練習後にはスッキリした表情。「西野さんの指示に従って、僕らは全力で取り組むだけ」と前向きになっていたことが、てこ入れを物語った。

 もっとも、決めたのは選手だ。指揮官は就任当初から積極的なプレスを指示していたという。しかし、2連敗を受けて選手ミーティングを尊重。一気にかじを切り「ボード上(机上)ではクリアになっている。ピッチ上でコロンビアに対して、どう対応するか」。生命線の守備戦術がようやく定まり、仮想コロンビアのパラグアイ戦で試された。

 もちろん状況、時間帯に応じたハイプレスも準備しており、後半も前から、はめにいく場面も目立った。西野ジャパンにとってターニングポイントになりそうな、合宿地ゼーフェルトでの決断だった。【木下淳】