香川、負の10番「打ち破る」今夜コロンビア戦

コロンビア戦前日練習に臨むサッカー日本代表イレブン(撮影・江口和貴)

 【サランスク(ロシア)18日】日本は今日19日、サッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会の1次リーグ初戦コロンビア戦を迎える。攻撃の中心は、トップ下で先発する背番号10のMF香川真司(29=ドルトムント)。運命の一戦を前に日刊スポーツへ決意を語り、2度目のW杯に懸ける思い、託されて8年目になる10番への愛着、ジンクス打破への覚悟を口にした。チームは決戦の会場モルドビア・アリーナで公式会見と最終調整に臨んだ。【取材・構成=木下淳】

 いよいよW杯初戦です。他国の試合で盛り上がっていますが、僕らはコロンビア戦に集中してきた。4年前と比較する気はありません。目を向けるのは過去より今。より厳しい展開になることを覚悟し、楽観的になることは絶対に避け、最も大事な初戦を迎えたい。

 2大会連続の10番は俊さん(06、10年大会の中村俊輔)以来。身が引き締まります。最初は11年のアジア杯、21歳でした。自ら希望したわけではないし、少年時代から1度も縁がなかった番号なので、まさか代表で…。でも、打診を受けた時は正直うれしかったし、迷いましたが「光栄。挑戦したい」と快諾しました。

 あれから8年。10番だ、責任だ、と(報道等で)見聞きし、考え過ぎた日も、違いを見せなきゃと思った日もありました。ドルトムントからマンチェスターUに移った前回ブラジル大会は、余計にその強迫観念が強かった気がします。もちろん結果が出なければ僕のせい。「何だよ10番なのに」は当然。だからこそ今回は貪欲に結果を求めたい。

 W杯で今まで日本の10番が先発した試合、得点した試合、どちらも勝ったことがないと聞きました。前回の僕も含めて。それが10番のジンクスなら、そんな統計があるなら、ロシアで打ち破るだけ。目指してきたのは、司令塔ではなく点取り屋タイプの新10番です。(12日パラグアイ戦で日本代表MFの歴代最多得点を30に更新したが)本当に決めるべきはW杯。不可能はない。10番は唯一無二の番号で誇りにしつつ、とらわれすぎず。絶妙なバランスで戦える気がしています。

 なぜなら、重圧を自分の中で消化できたから。世界では「10番」より「メッシ」が先。活躍しても「さすが10番」ではなく「さすがメッシ」です。僕も、そうやって「10」に打ち勝とうと意識するようになりました。10番イコール香川真司ではなく、香川真司がいて背番号は10だった、という順序。今までは「10番だ、やらなきゃ」が先で。愛着があるのは間違いないけれど、まずは自分を世界で証明した後、結果としてジンクスが破れれば理想です。

 (落選した)南アフリカは、仮に選ばれても当時の実力では活躍できなかったはず。初出場の4年前も、悔しさより、こんな感じでW杯って終わっちゃうのか…と。(事前合宿先の)米国で2戦2勝して僕も2得点。順調。でも、どこか緊張感が足りない楽観的な雰囲気で、恐れずに振り返れば、W杯を戦いに行くチームではなかった。結果は…(未勝利、無得点)。でも今回は監督が代わったり、追い込まれた状況。本当の集中、100%以上の力が引き出されると思います。

 この4年間、クラブで理不尽な招集外も経験しましたが、失敗を知った時、恐れるもの、失うものがなくなりました。つらい時、苦しい時があったのは本音。純粋にプレーしたいだけなのに、違う声が聞こえてくる時もありました。ただ、僕の周りにはチーム、スタッフ、家族、仲間、そしてサポーターがいてくれた。(2月に)負傷してからも支えてくれた。あとはピッチで表現するだけ。逆境でこそ、今の僕は真骨頂を発揮できる-。コロンビア戦から始まる道のりは険しいですが、皆さん、ともに戦いましょう。(香川真司)

 ◆日本代表のW杯での背番号10 98年のMF名波浩、02年のFW中山雅史、06、10年のMF中村俊輔、14年のMF香川真司と過去4人。先発出場は計8試合あるが、チームの戦績は1分け7敗と未勝利。得点は1点だけで、06年6月12日のオーストラリア戦の前半26分にMF中村俊輔が先制ゴールを決めている。ただ、その試合は試合終盤に3点を返されて逆転負け。10番のゴールが勝利に結びついたことはない。