乾は究極のサッカー小僧 野洲時代の親友明かす秘話

野洲高OB会でくつろぐ乾貴士(右から2人目)

 「究極のサッカー小僧」が、日本を16強に導く。コロンビアとの初戦を制した日本は明日24日、1次リーグ突破へ負けられないセネガル戦に臨む。大きな勝利へ、その鍵を握る1人が「コロンビア戦ではチームに迷惑をかけた」とセネガル戦でリベンジを誓うMF乾貴士(30=ベティス)。「セクシーフットボール」で旋風を巻き起こし、06年度の高校選手権を制した野洲高時代の同級生で大親友の長谷川敬亮氏(29=現野洲高サッカー部コーチ)に数々の「乾伝説」を聞いた。【構成=実藤健一】

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 ▼おい台風やぞ (高校)1年のちょうど今ごろ(6月)でしたね。台風で休校になった。部室に忘れ物があって取りに行ったらどしゃ降りの中、乾が1人、ボールを蹴っている。こいつスゲー。ほんまにサッカー好きなんやなと。

 ▼何でなん とにかく自分に厳しい。試合が終わってふと見たら、乾がグラウンドの隅っこで泣いとるんです。体育座りして。その理由に試合の勝敗は関係ない。ただ、自分の中で納得できないプレーがあったんでしょうね。当時はうっとうしくて、ほったらかしにしてました(笑い)。

 ▼もうやめて 乾の自主練習は常に8~9時間。必ず最後まで残って、ボール蹴ってましたね。一番うまいやつが、一番練習してましたから。「もうやめてくれ」って感じでしたね。

 ▼もう勘弁して 高校卒業して横浜に行った年ですね。毎日夜8時に電話がかかってくる。ほぼ4時間。さすがに電話代がきつくなったのか、ある時から2時間しゃべって「今からおまえからかけてきてくれ」。それで自分も一時、月の電話代6万円以上。地元に毎週のように帰ってきて、自分が車で駅までお迎えです。

 ▼ドイツ料理! フランクフルト時代、現地に行ったのに行きつけの日本料理店で同じどんぶりばかり。彼のいない時にドイツ料理食べに行きましたから。飲み物もお菓子も、1カ月単位で同じものばかり。焼き肉店でもタンしか食べない。まわりは困るんです。

 常に乾の近くにいる長谷川さんは「純なサッカー少年」と表現する。そんなサッカー少年があこがれる最高峰の舞台で、乾は大きな期待を抱かせる。

 ◆野洲高校サッカー部 06年度の高校選手権、世界を意識した山本佳司監督(現総監督)が構築した華麗なパスサッカーが大会を席巻した。「セクシーフットボール」と呼ばれ、その中心の1人に乾が君臨。初の日本一を成し遂げた。乾と長谷川さんが最終学年だった翌07年度は、3回戦で敗れた。