西野マジック!残り15分攻撃放棄…他力で決勝T

決勝トーナメント進出が決まり、喜び合う日本の選手たち(撮影・江口和貴)

<ワールドカップ(W杯)ロシア大会:日本0-1ポーランド>◇1次リーグH組◇28日◇ボルゴグラード

 西野ジャパンがフェアプレー突破だ! 日本(FIFAランク61位)が1次リーグ最終戦でポーランド(同8位)に0-1で敗れたが、2大会ぶり3度目の決勝トーナメント(T)進出を決めた。1勝1分け1敗で勝ち点4から伸ばせなかったが、勝ち点で並んだセネガルを順位決定規定のフェアプレーポイント差で上回り、同組2位で1次リーグを突破した。ベスト16による決勝T1回戦は7月2日(日本時間3日)にベルギー(同3位)と対戦し、過去最高のベスト8を目指す。

 最後は無抵抗で、もはや神頼みだった。残り15分ほど日本はただただ後方で攻めずにボールを回した。負けているにもかかわらず一切の攻撃を放棄。ブーイングを浴びても攻めなかった。攻めて1点食らうと敗退確実。1点もやれないから攻めない。無抵抗で負けを受け入れ、リードしているもう1試合、セネガル-コロンビア戦でコロンビアが勝っての突破を願った。

 狙い通り、0-1で終わらせ、待つ。願いがかなった。1分半ほど待ち、突破が確定。大ブーイングの中、フェアプレーポイントでセネガルを上回り、負けて薄氷の突破だった。

 会見場に来た指揮官は「非常にこう、厳しい選択。万が一という状況はこのピッチ上でも考えられましたし、他会場でも万が一があるわけです。選択をしたのは、そのままの状態をキープすること。このピッチ上で万が一が起こらないよう他力の選択を選んだ。負けてる状況をキープしている自分、チーム、本意ではない選択をしている。他力を頼っている我々…。非常にシビアな状況だったと思う。最終的にこのまま、このままでいい。選手たちがいかなるブーイングに負けず、実行した」とした。

 最後の采配同様、スタメンでも大勝負に出た。気温36度。猛暑のロシア・ボルゴグラード。決勝トーナメント進出がかかる大一番に、W杯初出場の選手3人を含む、思い切った先発11人を送り出した。第1戦、第2戦で得点した4人はベンチに置いた。

 試合前日の公式会見では「決して崩せない相手ではないと思っていますので。日本らしいクイックネスを持ってゴールに向かっていきたい」と決意を述べた。確かにボールは動いた。ただ…。ゴールに向かわずボールが動き続けるとは。

 指揮官の勝負強さ、決断が際立った。ギャンブルは一切やらないが、出演したラジオ番組の余興などで2回だけ馬券を買い、いずれも万馬券だったという強運は、何度か紹介されている。勝負師のひらめき。これが今や、日本の最大のストロングポイントだった。

 3戦目で初めて空席も目についた。ただ、その座席もサムライブルーの青。まるで日本のサポーターのようにも見える“ホーム”だったが、ブーイングにまみれても腹を決めて戦い突破が決まった。【八反誠】

 ◆フェアプレーポイント イエローカード1枚はマイナス1、イエローカード2枚の退場でマイナス3、一発退場がマイナス4、イエローカードを受けながら一発退場となった場合にはマイナス5。少ない方が上位となる。日本はセネガルと1勝1分け1敗の勝ち点4で並び、<1>得失点差0<2>総得点4<3>直接対決は引き分けと、いずれの条件でも決まらなかったため、順位決定は「フェアプレーポイント」の計算までもつれた。1次リーグ3試合で日本はイエローカード4枚のマイナス4、セネガルは同6枚のマイナス6で、日本が上となった。