川島初主将「2戦迷惑かけた」スーパーセーブで救う

前半、ゴールライン際のボールをセーブするGK川島(撮影・山崎安昭)

<ワールドカップ(W杯)ロシア大会:日本0-1ポーランド>◇1次リーグH組◇28日◇ボルゴグラード

 日本代表GK川島永嗣(35=メッス)が、名誉挽回のスーパーセーブで決勝トーナメント(T)進出に貢献した。前半32分、決定的なシュートを懸命に右手を伸ばしてストップした。コロンビア、セネガル戦は自身のミスが失点につながり厳しい声にさらされたが、大事な一戦でチームを救った。

 GKとして初めてW杯でキャプテンマークを巻いた川島が、今までの不安を吹き飛ばすビッグプレーでチームを救った。前半32分、カウンターを浴び、MFグロシツキのヘディングシュートを浴びた。誰もがやられた…と思った瞬間、右に横っ跳び。右の手のひらでボールをかきだした。会場に流れたゴールラインテクノロジーの映像は、ボールが半個分、ゴールラインを割っていた。あと数センチで失点の危機を救った。

 試合は0-1で敗れたが、フェアプレーポイントの差でギリギリ突破。結果的に、川島の救った1点がチームを決勝Tに導いた。川島は「うれしいです。この2試合、迷惑をかけていた。今日は自分がチームを救う番と。仕事ができてよかった」と安どの表情を浮かべた。

 前2戦はベテランらしからぬミスが目立った。初戦のコロンビア戦では直接FKを決められ、セネガル戦では痛恨のパンチングミスで失点した。ネット上では「川島交代論」の声が上がり、風当たりは日増しに強くなった。それでも指揮官は川島に絶大な信頼を置き、起用を続けた。

 前日のFIFAの公式会見にも出席した。川島は「次の試合でなにができるかが大事。次は助けるようにしたい」と決意を口にした。決勝T進出がかかった一戦で起用を決めた指揮官の信頼を裏切るわけにはいかなかった。

 川島をはじめ、ベテランたちがこぞって節目に到達した。31歳のDF長友、32歳のFW岡崎が先発した時点でそろってW杯通算10試合に出場。MF中田英が持っていた最多出場記録に並んだ。節目の試合で、9年越しの決勝T進出をつかんだ。

 前回ブラジル大会後、この4年の道のりは順風満帆ではなかった。15年夏にベルギー1部スタンダールを退団すると、その冬まで所属クラブが見つからず、異例の半年間の浪人生活を過ごした。国内クラブの復帰の道もあったが、あえて厳しい道を選んだ。孤独に耐え、練習だけの日々。日本代表からも外れた。「あれが糧になったとは簡単に言いたくない」。おのずと逆境にめげない精神力は培われた。

 後半8分には相手カウンター攻撃に冷静に対応し、相手スルーパスを好セーブ。後半14分にフリーキックから失点を許したが、90分間を通し、日本代表の守護神の務めを全うした。川島は「この試合の結果に関しては残念。3試合全員でつかんだ予選突破。1人1人の気持ちが結果につながっている。自分たちは今まで成し遂げたことのないことをやりたい」。世界の強豪が待つ“ラウンド16”へ目を向けた。【岡崎悠利】

 ▼日本代表のW杯主将 GK川島がW杯で初めてキャプテンマークを巻いた。これまではMF長谷部9、DF宮本5、DF井原3、DF森岡1、DF中沢1試合で、GKとしては今回の川島が初。日本が初めてW杯に出場した98年大会は3試合すべて井原。02年大会は森岡が初戦で主将を務めるも、けがで2戦目以降の3試合は宮本に交代した。その後は宮本が06年大会までチームをまとめたが、06年の1次リーグ3戦目は中沢がキャプテンマークを巻いた。10年大会は本番直前に中沢から長谷部に変更され、以降は9試合連続で長谷部が務めていた。