最弱ロシアが優勝しちゃう?60差スペイン破り8強

PK戦で勝利し、GKアキンフェーフ(手前)に駆け寄って喜ぶロシアの選手たち(撮影・PNP)

<ワールドカップ(W杯)ロシア大会:スペイン1(PK3-4)1ロシア>◇決勝トーナメント1回戦◇1日◇モスクワ・ルジニキ

 「最弱開催国」が史上最大の下克上を果たした。ロシアが1-1からのPK戦の末に、4-3で10年覇者スペインを撃破した。FIFAランクでは70位と10位。決勝トーナメントで「60差」は過去最大の番狂わせだった。結果、ロシアが入るブロックで決勝進出経験チームはイングランドとスウェーデンのみも、どちらも半世紀以上前の記録…。新鮮な顔ぶれを「演出」する形となったロシアだが、ワールドカップ(W杯)の「法則」にならえば優勝も夢ではない!?

 わずかに、しかし力強くボールをはじき飛ばした。横っ跳びしたロシアGKアキンフェーフ。ほぼ真ん中に打ち込まれた球に、残された左足を瞬時に動かして反応した。蹴ったアスパスとスペイン勢のぼうぜん、対照的に歓喜のランに入るロシア勢。7万8000人以上で満員に膨らんだルジニキ競技場に地鳴りの歓声が響き、明暗くっきりの快挙は遂げられた。

 ロシア国民も「まさか勝てるなんて」と仰天の勝利。5バックでスペースを与えず、耐えに耐えた。前半12分にオウンゴールで先制されたが、前半41分にジュバがPKで同点。25本のシュートを浴びても、土壇場で守りきった。「ファンとチームこそMVPだ」。殊勲のアキンフェーフは、ソ連時代の70年大会以来の8強入りに一体感を強調。そのMVPのファンは、首都モスクワの赤の広場で「ロシア、ロシア」と連呼した。プーチン大統領もチェルチェソフ監督に直接電話し、「スポーツで最も重要なのは結果だ」と祝福した。

 FIFAランクが参加32カ国中で最下位の70位だった開催国の躍進は、W杯に新たな波をもたらした。スペインが敗退し、ロシアが入るブロックで優勝経験チームはイングランド(66年大会)、決勝に進んだことがある国は他にスウェーデンだけ(58年大会)となったが、ともに50年以上前。モスクワで決勝(15日)の舞台に立つ国は目新しくなる。

 もちろん、ロシアもその候補だ。オリンピックで2度の金メダルや、W杯でもソ連時代の66年大会4位など輝かしい歴史を持つ。大会前の不振で批判を浴びていたチェルチェソフ監督は、試合後に胸の内を聞かれ、にこりともせずに言った。「簡単なことだ。次の試合のことを考えている」。8強入りが、ロシアになって以後の低迷期に終わりを告げる結果ではない。まだ先がある。

 この日、町の通りでは国旗を掲げ、クラクションを鳴らす車が行き交った。勝利を祝う歌声が響いた。そんなお祭り騒ぎは、まだまだ終わらない。

 ◆FIFAランクのポイント 直近4年間の国際Aマッチでポイントが算出される。4年間を12カ月ごとに分け、それぞれの期間で獲得した合計ポイントを試合数で割り、平均値を算出する。1試合のポイント算出方法は<1>結果<2>大会の重要度<3>対戦相手の強さ<4>大陸連盟の強さ-のそれぞれの数値をかけ算して導き出される。<2>の係数は親善試合などが1・0、W杯予選やアジア杯などの各大陸選手権の予選が2・5、大陸選手権の本戦とコンフェデ杯は3・0、W杯は4・0となっている。

 ◆FIFAランクの差に見る「下克上」 FIFAランク70位のロシアが、10位のスペインにPK戦の末に勝利した。その差は60差。過去最大差は、10年南アフリカ大会で83位の南アフリカが9位のフランスに勝った74差だが、この試合は1次リーグ。決勝トーナメントでは今回のロシア-スペインの60差が史上最大差となった(記録上は引き分け扱い)。今大会は他に、57位の韓国が1位のドイツに1次リーグで勝利するなど大番狂わせが目立つ。