フランス万歳!若い世代が解いた「ジダンの呪縛」

優勝を決め、表彰式で喜ぶフランスの選手たち(撮影・PNP)

<ワールドカップ(W杯)ロシア大会:フランス4-2クロアチア>◇決勝◇15日◇モスクワ・ルジニキ

 第21回ワールドカップ(W杯)ロシア大会は、フランスの5大会ぶり2度目の優勝で幕を閉じた。クロアチア相手に、決勝では48年ぶりとなる4ゴールを挙げて4-2で快勝。ディディエ・デシャン監督(49)が平均年齢25・6歳の若いチームを躍動させ、前回優勝の98年に生まれた19歳FWエムバペが通算4得点で「ジダンの呪縛」を解いた。次回は22年にカタールで初開催される。アジアでは02年の日韓大会以来で、酷暑を避け11~12月に行われる。

 デシャン監督の優勝会見に選手が乱入した。隠れていた扉から一斉に飛び出してシャンパンファイト。「ディディエ・デシャ~ン」と陽気に歌い、びしょ濡れの指揮官もグリーズマンと肩を組んだ。ひとしきり暴れた後、ポグバが壇上の水たまりを掃除して会見がスタート。「酒くさいな」の第一声で爆笑に包まれた。

 「すみません、彼らは若いので」。史上2番目に若い平均年齢25・6歳をデシャン監督はかばったが、羽目も外したくなる大勝だった。W杯通算900試合目となった決勝。前半18分にグリーズマンの直接FKから史上初の決勝オウンゴールで先制。しかも、この時点でシュートはゼロ。シュートなしの先制も初の現象だった。1-1の同38分には雷鳴とどろく中、今大会から導入されたビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)でPKを獲得。グリーズマンで勝ち越した。

 後半7分には、プーチン大統領に反目するバンドの男女4人がピッチに駆け込む騒ぎがあり、クロアチア攻勢の流れが途切れる幸運もあった。その7分後にポグバの左足で3点目、さらに6分後、19歳エムバペが右足で4点目。決勝での10代ゴールはペレ以来60年ぶりも「ペレさんとは違う道を僕は進む。まだスタート地点。もっと遠くへ行く野心がある」と言った。通算4点で最優秀若手選手賞。デシャン監督から「メッシ、ロナウドに匹敵」と評される宝石は、メッシのアルゼンチン戦で2発と世代交代も決定づけた。

 チームは98年に英雄ジダンを擁して初優勝。引退後の10年大会は未勝利で敗退しており「ジダン抜きで頂点は無理」との呪縛があった。解き放ったのが、10番を受け継いだエムバペであり、プラティニ以来の「将軍」と呼ばれるポグバだ。デシャン監督は「98年は19歳のアンリとトレゼゲがいて、その後のW杯も優勝できると思ったが。ただ、キリアン(エムバペ)はこの先も王者になれる」。今大会4得点のグリーズマンも欧州選手権とW杯の通算得点が10となり、ジダンに並んだ。ジダン以来の決勝2発には1点目がオウンゴールとなって届かなかったが「自分の気泡にとどまった(集中した)」と納得。試合後、早くも2つ目の星を胸に刻んだユニホームに着替えて喜んだ。

 98年の主将だったデシャン監督は12年に就任。ベンゼマ外しなど規律を整え、史上3人目の選手&監督Vを達成し、胴上げで3度、宙を舞った。美しく試合を支配した20年前と違い、ボール保持率で下回りながらも勝ってきた大会。会見で「美しいと思うか?」と突っ込まれたが、口角を上げた。「我々はチャンピオンなんだ。そして、まだまだ強くなる」と。【木下淳】

 ◆98年フランス大会 出場数が24から32に増えた20世紀最後の大会で、開催国のフランスが悲願の初優勝を果たした。ドゥンガ主将率いるブラジルとの決勝で、司令塔ジダンが前半にCKを頭で合わせて2点を奪うなど3-0で勝利した。

 快進撃を見せたのが初出場のクロアチア。準々決勝でドイツを3-0で破るなど3位に入り、6得点のスーケルが得点王に。決勝トーナメント1回戦ではアルゼンチンがイングランドとの大激戦をPK戦の末に制した。イングランドは報復行為でベッカムが退場となりサポーターやマスコミから批判を浴びた。

 初出場の日本は1次リーグでアルゼンチンに0-1と善戦し、ジャマイカ戦では中山雅史が日本の初得点をマークしたが、3戦全敗に終わった。