<欧州選手権:スペイン4-0イタリア>◇決勝◇1日◇ウクライナ・キエフ

 “悪童”が泣いた。イタリアFWバロテリは、試合終了の笛が鳴ると、すぐロッカー室へ向かった。授賞式のためピッチに残るよう求めたピン助監督を押しのけ、姿を消した。その後、ピッチに戻ったバロテリは座り込んで泣き、プランデリ監督は「この敗戦を経験して、お前はもっと良い選手になれる」と慰めた。

 ガーナ移民2世の黒人選手。試合中にバナナを投げつけられたり、差別的ヤジを受け、キレてしまうことも多かった。だが今大会3得点で得点ランクのトップタイ。母国でも汚いヤジを受ける存在からヒーローへ、立場が変わってきた。

 バロテリはユニホームを脱いで警告を受けたドイツ戦での得点について「だれかがオレの喜び方を気にくわないとしたら、それはオレの体の美しさをうらやましがっているからだ」と、黒人選手として胸を張った。イタリア代表は来年コンフェデ杯に欧州代表として出場する(スペインがW杯王者として出るため)。日本にとって、成長したバロテリを止めるのは簡単ではない。(波平千種通信員)