サッカー日本代表MF乾貴士(30)のスペイン1部ベティスへの入団会見が12日、都内のスペイン大使館で行われた。スペインリーグのクラブが、選手の母国で入団会見を開くのは史上初めてなのはもちろん、スペイン大使館での入団会見も異例だ。

 席上で、スペインのプロサッカーリーグ「ラ・リーガ」の東南アジア、日本、韓国、オーストラリア担当プロジェクトマネジャーのイバン・コディナ氏は、17年6月22日にJリーグと戦略的連携協定を結んでから1年が経過した今「長期間に渡っていい関係を作る」と日本との関係強化を、さらに重視していると強調した。

 その一環として、17-18年にベティスが同じスペイン・アンダルシア州の州都セビージャをホームにするセビリアとの「アンダルシアダービー」、乾とともにワールドカップ(W杯)ロシア大会に出場したMF柴崎岳(26)が所属するヘタフェの試合を、日本のファンがテレビで生中継を観戦しやすい日本時間午後10時、現地時間同3時(サマータイム時)キックオフにしたと説明。「ベティスの試合は、日本時間に合わせて夜10時にやりました。ヘタフェも、やりました。今後も、そのような流れを、ラ・リーガとして積極的に行っていければ」と言及。日本人2選手の出場予定試合のキックオフ時間を、日本時間を意識して設定することに、力を入れていく考えを示した。

 コディナ氏は、J1ヴィッセル神戸にスペイン代表MFアンドレス・イニエスタ、サガン鳥栖に元同国代表FWフェルナンド・トーレスが加入することも、ラ・リーガとして前向きに捉えていると強調。「W杯に乾選手が出ましたが、柴崎選手も出た。2人の日本の有名な選手がラ・リーガでプレーしている。逆にスペインから日本を考えるとイニエスタ、トーレスがJリーグに加入することになった。ラ・リーガとしても、良い役割を出来ているんじゃないかと思う」と笑みを浮かべた。

 一方、乾と3年契約を結んだベティスのビジネス担当ゼネラル・ダイレクターのラモン・アラルコン氏は、全世界に5万373人のソシオ(会員)と404のペーニャス(ファンクラブを)を持つベティスが、国際戦略の中で重要と考えているマーケットとして、メキシコとともに日本を挙げた。

 メキシコはスペイン語圏で、所属のDFアンドレス・グアルダードは、メキシコ代表でキャプテンを務めるなど関係が深い。一方、日本は17年10月にジェフユナイテッド千葉レディースを退団した、なでしこジャパンGK山根恵里奈(27)が加入し、活躍を続けている。そこにW杯で活躍した乾が加入したことで、国際戦略において日本の重要度が増したという。

 アラルコン氏は「日本との関係が出来る限り、長期になることをイメージしている。スペインと日本の架け橋のような存在…日本の子どもを招いて指導し、逆にスペインの指導者を日本に招き、学ばせたい」と日本との今後の関係に、前向きな姿勢を見せた。

 スペインの関係者は、マーケティング面だけでなく、日本のサッカー自体も評価している。コディナ氏は「(戦略的連携協定で)1番、重要なことは日本サッカーのレベル。アジアの中で1番、高い…そこが1番、重要。リーガの知識を出来るだけ、日本に持っていきたい。ノウハウを持っていくだけじゃなく、逆に我々も日本、アジアのサッカーから学ぶんだ、という気持ちでやらせてもらっています」と語った。

 さらにW杯での日本代表の戦いを「W杯の日本のパフォーマンスに、まず、おめでとうと言わせて下さい。非常にいいパフォーマンスが出来た」とたたえた。その上で「そもそも日本サッカーが成長し、育成もある程度、出来ている。既にあるものに助言し、積み上げていくイメージ」と日本サッカーの現在地点が上昇し、スペインリーグの関わり方も変わってきていることを示唆した。【村上幸将】