ベガルタ仙台からロシア・プレミアリーグのCSKAモスクワに完全移籍したFW西村拓真(21)が、裸一貫でロシアに乗り込んだ。3日、チーム合流のため成田空港から出発。荷物もスーツケース2つと最低限に抑え、まずは初海外の新しい環境に飛び込んで自身の現在地を確かめるつもりだ。今季Jリーグでは日本人最多タイの11得点。MF本田圭佑(32=メルボルン・ビクトリー)の飛躍の一助となった強豪クラブで、レアル・マドリード(スペイン)と同組の欧州チャンピオンズリーグ(CL)でも成長をつかみ取る覚悟だ。

仙台から世界へ-。21歳の若きストライカー西村は「早く向こうでサッカーがしたくてウズウズしています。不安なんてない。ワクワクです。何ができて、何ができないのか。新たなものを、行ってみて見つけたい」と胸を躍らせた。クラブ生え抜き初の海外挑戦が本格発進した。

現在2勝3分け1敗の6位と苦戦しているリーグ戦は、15日のウファ戦で再開する。Rマドリードやローマ(イタリア)と同組の欧州CLも、19日のプルゼニ(チェコ)戦で開幕。「まずは今まで通りに、目の前のことから自分の実力を出すこと。楽しみな部分はあるが、先は見ない。欧州CLの相手だけでなく、ロシアリーグも個々の能力やスピード感は高い。確実にすべてにおいて成長できることは間違いない」。未知の敵に臆することなく、仙台で培った実力を信じ、最高峰の試合出場をステップアップにつなげる。

同年代が欧州などで実力を磨く中「チャンスがあれば、すぐにでも行きたかった」。8月末の獲得オファーに「この時が来たか」と即決。「調べてみたら、すごいクラブだった」と本田が所属していた強豪だと知り、さらに気持ちも高まった。クラブの理解もあって約1週間で渡欧。出発前の成田空港では搭乗手続き後の出発口前で、「パスポートがない」。カバンなどを探しても見つからず、「カウンターのお姉さんから返してもらってないよね?」と大慌てで小走り。引き返した瞬間、ズボンの左ポケットから“赤い物体”がポロリ。見送った関係者から「最後までお前らしい」の声。ドタバタ出国に苦笑いしながら手を振った。

背番号「19」と、ロシア語通訳は決まったが、新居などを含め「すべては現地調達します」。無の境地でモスクワ入りした。「まずは英語を勉強。理想はロシア語でコミュニケーションを取れるようにしたい」。新天地での信頼を勝ち得るゴールの積み重ねが、言葉の壁も越えるスタートとなる。【鎌田直秀】