W杯ロシア大会の日本代表MF香川真司(29)が、約1カ月ぶりに公式戦で出番を得た。ドルトムントはホームで2部ウニオン・ベルリンと対戦。延長の末に3-2で振り切り、来年の3回戦に駒を進めた。

4-2-3-1システムのトップ下で先発した香川は9月26日のリーグ・ニュルンベルク戦以来の出場。前半40分の先制点、後半28分の勝ち越し点に絡む動きを見せ、1点リードの後半33分にロイスと代わって退いた。1点目は、右クロスに香川が頭で合わせ、GKが止めてこぼしたところをプリシッチが押し込んだ。2点目は、香川が中央で粘って右サイドのプリシッチにパス。受けたプリシッチはペナルティーエリア右にスルーパスを出し、フィリップがニアサイドに右足で決めたもの。香川が起点になった。

試合後、報道陣の取材に応じ「いや、まあ難しい試合でしたね」と第一声。延長戦の末に勝ち切り「とりあえず、勝てて良かったです」と話した。1点目が入るまで時間がかかったことにも「メンバーも変わったりしながらだったし、まあ僕自身も久しぶりだったので。様子を見ながらというか、なかなかチームとしてのスピードが上がらなかった」と振り返った。

例年、番狂わせが起きるドイツ杯の難しさについては「それもあった。相手も今季、負けてないということで非常に堅いチームだったので」と苦戦した。個人としても「まあ久しぶりの試合でしたし、このタイミングぐらいしかね、チャンスはないだろうなと思ってたので。まあ何としても、もちろん勝つことはもちろんですけど、自分自身も結果も欲しかったですけど、そこはまあ、結果の世界ですからね。今は特に、このチームに関しては、やっぱりみんな若い、いい選手を含めて。まあ、そういう意味では物足りないですけど」と置かれている立場を冷静に分析した。

今季は負傷も多く、出番に恵まれていない。その中で、どんなプレーをしていこうと考えているのか。「なかなかね、絡んでないんでね。試合に出て、そういうのはつかんでいくものではあると思うし、現状が現状なんでね。まあ非常に難しい現状ではある…。それは自分も把握してるし、日々、練習の中で前向きにやろうと。でも、なかなかこういう現状が続くのは、非常に難しいというのは正直ありますけど。ただ、それで落ちてくというかね、そういうところでチャンスを生かせるか、生かせないか…少ないチャンスをね。それは自分自身にかかってると思うんで、そういう意味では『結果』っていう意味では今日は物足りないですけどね」と語った。

それでも、久々に先発して長い時間プレーした。前に進んだ感触もつかめたはずだが、本人は自分に対して厳しかった。「うーん、難しいというかね、そんな甘い世界じゃないし。それをね、やっぱり日々痛感してるんでね。いくら自分がここでやってても、18歳、19歳の選手がポンッて出てくる世界ですし。そういう選手たちが結果を残して勝ち取る。そうやって評価を上げていく世界なので、結局はそこで奪い切れないと出番がなくなってくる。シンプルな話で。そこの葛藤にね、自分がどれだけ打ち勝って、前向きにやり続けていくか。これは本当に自分にとっては、なかなかない経験ではあるし。それは非常に難しいもの。厳しいものではあるけど、ここで自分自身が諦めたら終わりなんで、そういうものは日々、自問自答しながらやってますけど」と胸中を打ち明けた。

右足首の痛みはなくなった。あとは状態を上げていくだけだ。ゲッツェは開幕から3試合連続でベンチ止まりだったが、現在は起用されている。「まあ流れは絶対あるので。今は(チームが)いい時期なのでね。なかなか流れを個人的に変えるのは難しいですけど、必ず…。この前、引き分けたり、嫌な追いつかれ方をした時や、今日もギリギリで勝ちましたけど、ちょっと試合もタイトになってきて、また引き分けたり、負けた時に、どういう変化が見られるか。去年も最初は良かったけど負けだして、なかなか負の連鎖を止められずにっていうのを経験しているし、シーズン長いのでね、何が起こるかわからないし、どこにチャンスがあるか…。けが人も含め、そこだけは切らさないように、ってのは意識してます」と集中を高める。

今季のチームは強い。「強いね。めちゃめちゃ強い(笑い)」と認める中で定位置を奪い返す作業は容易ではないが「出た選手が活躍して結果を残しているのが、その強さなのかなと。波に乗るか、乗らないか。その準備をするか、しないか。諦めるか、諦めないか-。それは自分自身を信じてやるしかない」。やるべきことは、はっきりしている中で次のチャンスが待たれる。(鈴木智貴通信員)