オーストラリアAリーグのメルボルン・ビクトリーを退団し、所属先が未定の本田圭佑(33)は一体どこで、何をしているのか? とにかく忙しくしていることだけは間違いない。ここ数年、およそサッカー選手らしくないオフを過ごしているが、本田にとってはこれも「例年通り」の日常で、7月11日には、立て続けに発表が続いた。

その内容は、注目の移籍先についてではなく、それどころか、サッカーとは全く関係ないものだった。ただ、本田にとっては、本気で「W杯優勝」を掲げるサッカーと全く同じ熱量で取り組む事柄についてだった。

まず「YouTuber」になった。YouTubeに公式チャンネルを開設し1分強の動画をアップ。動画の中で「新しいトピックにとにかく挑戦し続けるってのは、すごい良いかもしれないですね」などと語っている。詳細不明だが、新しいプロジェクトへ、1歩踏み出した形だ。

そして、同じ日の夕方、次は自身が最高経営責任者(CEO)の会社「Now Do」でソフトウエアエンジニアを広く募集した。ツイッターで「募集! 成長中毒者で世界にインパクトを与えたいと思っているトップ・オブ・エンジニアの皆さん! 集まって下さい!」といきなり呼び掛けた。

「成長中毒者」とは、いかにも本田らしい表現だが、この募集に際し、自ら記した長文をnoteで公開している。

なかなか読み応えがある。こんな長文をサラリと書かれてしまっては、記者としては困るのだが、一部抜粋する。

まず冒頭、「今回は改めて僕がサッカー以外の道に進むようになった背景やNowDoをスタートしてからの恥ずかしい失敗談など、これまでメディアには話してこなかったようなことも告白しようと思います。長文ですが読んでもらえると嬉しいです」などと始めている。

そして、肝心な部分を次のように書く。

「この時をキッカケに経済やお金についての本を貪り読み始めました。2015年頃でした。自分が現役サッカー選手であることを上手く活かしてビジネスで世界を変えようと強く思い、今日のベンチャーへの投資も、投資を通じて、経済や社会を良くしようとやってきてます。そして、この想いがその他全てのビジネス活動にも繋がっています。その日から僕は『(世界中の)誰もが夢を追い続けられる世界を創る』というミッションを持ち続けて挑戦しています」

本田の目指すところは、果てしない。例えば、W杯なら「優勝」だし、かなわないと思えるようなことを公言し、突き進んで、注目される大舞台で一定の答えを出してきた。

それどころか、基準はもう「世界」ではなく「宇宙」を持ち出すスケール感。同時に「死生観」というか、人はいつ死ぬか分からないといった強い思いも抱く。とにかく、やり残しがないよう、まるで生き急ぐかのように走り続ける。

サッカーの面でも、大きな野望に向かっている。20年東京五輪を、年齢制限外のオーバーエージ(OA)枠で日本代表として戦い、金メダルを獲得するという最大の目標のため、より高いレベルでのプレーを求めている。

今後、注目の移籍先が決まり、サッカーのシーズンに入れば選手としての一面に加え、実質的なカンボジア代表監督として、9月開幕のW杯カタール大会のアジア2次予選へと向かう。組み合わせ次第では、日本と同組になる可能性もある。

いずれにせよ、本田からは目が離せない。

ちなみに、移籍決定は2年前のパチューカが7月14日、1年前のメルボルン・ビクトリーが8月6日だった。例年通りなら、ここからが本番となる。

ただ、注目の移籍先が決まってサッカーの本格シーズンが到来しようと、本田が抱く「(世界中の)誰もが夢を追い続けられる世界を創るというミッション」は変わらない。

サッカーをしながらビジネスにまい進し、同時にエンジェル投資家として同志の米俳優ウィル・スミスらと活動する。そして、プロデュースするサッカー教室を通じ、世界中の子どもたちに夢を与え続けようとするだろう。

本田の生き方は、自分をこうだと定義しない。だから、見ていて面白い。自分の限界を決めず、サッカー選手でありながら、教育者や投資家、起業家を名乗り、実際に活動する。やりたい、やってみたら面白そうだけど、簡単にはできないことをやってのける、やはり、そこに魅力があるのだと思う。【八反誠】