長谷部「無観客に危機感」コロナ禍のシーズン語る

  • 6月6日のマインツ戦で競り合うEフランクフルト長谷部(左)。ドイツ1部リーグ通算309試合出場とし、アジア選手単独最多記録を樹立(共同)
  • 取材に応じた長谷部(本人提供)(共同)

サッカーのドイツ1部リーグ、アイントラハト・フランクフルトの長谷部誠(36)がオンラインで共同通信のインタビューに応じ、新型コロナウイルス禍による中断があった異例のシーズンを振り返った。無観客試合という特殊な環境でプレーして感じた危機感や今後への思いを語った。

-コロナ対策の下、無事リーグ戦が終わった

「大きな1つの感想として、その事実自体はポジティブに捉えられると思う。ただ、1つ自分の中で恐怖心というか不安に思っているのは、全体が無観客試合に慣れてしまっているということ。(放送権収入を得るという)経済の部分で無観客試合をしてシーズンを終えられたのはいいけど、それによって失ったものも正直ちょっとあるんじゃないかなという危機感がある」

-失ったものとは

「実際にスタジアムに行かなくなっただけでなく、『臨場感が伝わってこない、面白くない』からとテレビでもサッカーを見なくなったという人が結構いると聞く。サッカー離れというか。そこをどう取り戻して、よりよくしていけるかは、サッカー界が真剣に考えなきゃいけないと思う」

-ピッチで感じた難しさは

「本当に喜怒哀楽は減る。実際にプレーにも影響は出る。最後の1歩、スライディングをするかしないか、そこはサポーターの後押しがあったらいけるところもある。ホームの優位性も全くなくなった。ウオーミングアップのときから『シーン』としたスタジアムで、自分たちがボールを蹴る音を聞いて…。こういう中でサッカーをやる意味を考えてしまっていた」

-以前は満員のスタジアムでのプレーが当たり前だった

「実際、いつからサポーターの前でプレーできるか、ちょっと想像がつかない。コロナの前の形に戻るには時間がかかるかなと思う。やっぱり本当にこれまで当たり前にあったものが急になくなって、あらためて自分たちがどれだけ幸せだったかを感じた。あの幸せな場所にできるだけ早く戻りたい」

-再開後、先発した試合は4勝1分け1敗

「チャンスを与えられた時に、自分のパフォーマンスを出すことしか考えていなかった。それがチームの結果と比例した。36歳だけど、まだまだ価値を示せたんじゃないかという思いはある」

-ブンデスリーガで車範根(韓国)の308試合のアジア選手最多出場記録を塗り替えた。記録にこだわりはないと言い続けている

「小さな小さな積み重ねをしてきたことで、大きな数字(通算311試合出場まで更新)につながったのは誇り。自分は何か武器がある選手じゃない。目立たないし、スター性があるわけでもない。監督ら周りの巡り合わせや運の引き寄せ方が本当に良くて、今の自分がある。記録も絶対に自分だけの力じゃここまで来られなかった。感謝しないといけない」

-膝の手術を決断

「来季のスタートから良い形で入るため。まずは体をしっかりと休め、また来シーズンに向けて準備していく」

-新型コロナウイルスで社会が変容する中、プロ選手のあり方とは

「ドイツでも複数人で行うスポーツが禁止されている中でサッカーはスタートした。特権を与えられた分、社会的責任は選手1人1人が自覚しないと。人々に何かを与えたいというより、何かを感じてもらえたらありがたいという謙虚な気持ちが大事。サッカーは特別、自分たちは特別だと振る舞ったら周りの人に何も感じてもらえない」

-コロナの時代のスポーツはどうあるべきか

「スタジアムでサポーターと同じ空気を吸って臨場感を味わう、情熱や喜怒哀楽をみんなで共有することは、これから先も絶対に失われてはいけないものだと思っている。よく経済と健康のバランスと言われるけれど、それに加えて『人々の思い』というものもある。そこのバランスを僕は三角形として考えている。そのバランスを取りながら前に進みたい」