久保デビュー弾「ユヤにやらせよう」指名されFK

<ベルギーリーグ:ヘント2-0クラブ・ブリュージュ>◇29日◇ヘント

 ヘントFW久保裕也(23)が衝撃のベルギーリーグデビューを飾った。ホームでのクラブ・ブリュージュ戦に先発し、後半8分に直接FKで先制点を挙げた。ヤングボーイズ(スイス)から移籍後初戦ながら、FKはチームメートから名指しで任されたものだった。首位チームを相手に2-0の勝利を導き、期待と信頼に応えた。日本代表定着につながる成長を目指す新天地で、絶好のスタートを切った。

 久保の鮮やかなヘント初得点は、ハーフタイムのロッカー室の会話から生まれた。普段FKを蹴るMFミリセビッチが病気で欠場の上、代役を務めたMFベルストネートが前半で交代。バンハーゼブルック監督はセットプレーを誰に任せるか悩んだ末、選手に尋ねてみた。すると「ユヤ(久保)。ユヤにやらせよう」と声が上がった。

 同監督は「初めての試合だし、少し早すぎるかも」と思い、本人に確認すると「OK。僕がやるよ」と久保は即答した。「彼が自分から言ったんじゃない。日本人らしく遠慮していたのだろう」(同監督)。

 チームメートの信頼はすぐに証明された。後半8分、ゴール斜め左約20メートルからのFK。右足からの一撃は鋭く曲がってゴール左上に突き刺さる。ベンチ前で久保を中心に歓喜の輪ができ、指揮官も「素晴らしいことをやってくれた」と大喜び。久保は後半28分で退き「チームの勝利と初ゴール決められて幸せです!」「すごく優しいチームメート」と笑顔の絵文字入りツイッターで伝えた。

 地元メディアの評価も高い。フットボールマガジン誌の記者は「いいデビュー。背番号10の役目をしていた」と話し、「2回しか練習参加していないのに、スタイルに合っている」と才能と順応性を強調した。

 昨年、日本代表デビューし、2試合に出場。代表定着のため「ここでプレーすれば伸びる可能性がある」と、レベルアップを目指してスイスから舞台をベルギーに移した。まずは視界良好の船出となった。

<欧州クラブでの主なデビュー戦ゴール>

 ◆尾崎加寿夫(ビーレフェルト) 83年8月13日のケルン戦、ブンデス史上2人目の日本人として1得点で3-2の勝利に貢献。

 ◆中田英寿(ペルージャ) 98年9月13日、ユベントス戦。2得点も3-4で敗れた。

 ◆西沢明訓(ボルトン) 01年9月11日のウォルソン戦。後半ロスタイムに同点弾。

 ◆中村俊輔(レッジーナ) 02年8月18日のターラント戦。右足で先制点。

 ◆大久保嘉人(マジョルカ) 05年1月9日のデポルティボ戦。1アシストの後、頭で同点弾。

 ◆平山相太(ヘラクレス) 05年8月20日のデンハーグ戦。出場15分でヘッド弾2発。

 ◆高原直泰(フランクフルト) 06年9月9日のジーゲン戦。こぼれ球を押し込み、2-0で勝利。

 ◆森本貴幸(カターニア) 07年1月28日のアタランタ戦。後半39分に出場し、3分後に同点弾。

 ◆原口元気(ヘルタ) 14年8月16日のビクトリア・ケルン戦。左MFで出て1ゴール。