柴崎急転、破談ラスパルマスの隣島テネリフェと契約

スペイン2部テネリフェ移籍が決定しタオルマフラーを手にする柴崎(撮影・山本孔一)

 鹿島MF柴崎岳(24)のスペイン2部テネリフェ移籍が決まった。1月31日、クラブが発表した。当初は同じスペイン領カナリア諸島を本拠とする同1部ラスパルマスが第1候補だったが、前日30日に破談。同時進行で交渉を進めていたテネリフェに急転した。欧州志向も強く、鹿島残留より2部でもスペインでのプレーを決断。契約は6月末まで約5カ月の短期となる。この日、契約のため本拠地に到着。今日1日に入団会見を行う。

 柴崎が航空機で降り立ったのはカナリア諸島のテネリフェ島だった。移籍間近だったラスパルマスのグランカナリア島の隣島。サポーターや、約30人の報道陣を前に「このチームでやれることをうれしく思っているし、しっかりチームに貢献したい」。チームカラーの青いタオルマフラーを手に記念撮影に応じると、少しだけ笑顔も見せた。

 クラブ公式ホームページ上では、昨年12月のクラブW杯決勝のRマドリード戦(スペイン)で2得点した写真を掲載して紹介した。テネリフェは現在2部6位で、昇格プレーオフ圏内(3~6位)につける。「攻撃が好きなので、しっかりと攻撃面で発揮したい。得点、アシストのプレーが好きだし、ゴールにつながるプレーを積極的に出していこうと思う」。09-10年以来8季ぶりの1部昇格の期待を背負う決意表明となった。

 今日1日には本拠で入団会見を行う。だが、道のりは険しかった。クラブW杯Rマドリード(スペイン)戦で一気に知名度は上がったはずだった。契約も切れ、移籍金もなし。鹿島側も海外志向の強さを尊重し、容認した。それでも、オファーがなかったのが現実だった。代理人が売り込み、ようやく1部中堅のラスパルマスが獲得を検討。すぐに契約できるように、28日にはスペイン入りしたが、30日に破談。欧州連合(EU)圏外選手を放出して1枠空いても、結論は南米選手優先だった。

 鹿島残留より2部でもスペイン。欧州主要リーグ1部が理想だったが“保険”が残っていたのが唯一の救いだった。鹿島幹部は「少しでも上をということで(交渉を)やっていたけれど、ずっと(テネリフェとも)話はしていたようです。高校受験の滑り止めみたいな感じで」と明かす。31日の移籍期限間際の最終選択肢は2部しかなかった。それでも新天地を選んだ。

 テネリフェ関係者によると、契約期間は今季終了の6月末まで。5カ月の短期契約は、裏を返せば力量を試されている証しでもある。「日本に戻ることは考えていない。できるだけ長く、トップレベルでプレーしたい」。チームの救世主として昇格を導く存在となった時、強豪クラブだけでなく、日本代表ハリルホジッチ監督からオファーが届く道も開ける。【鎌田直秀】

<テネリフェメモ>

 ◆歴史 1922年創立、地域リーグから戦い、61年に初めて1部昇格もすぐ降格、2部、3部、4部も経験し、89年に再昇格。91-92年に元アルゼンチン代表のバルダーノ氏、95-96年に名将ハインケス氏が監督を務め、ともに5位となったのが最高位。99年に降格し、00-01年にベニテス監督が率いて1部昇格も、その後は財政難もあってほとんど2部、3部。

 ◆過去の所属選手 FWマカーイ、MFルイス・ガルシア、MFレドンドらがおり、いずれも後にビッグクラブで活躍した。

 ◆現監督 ホセ・マルティ氏(41)。現役時代は統率力のあるMFで、テネリフェでは00-01年に主将として昇格に貢献。11年にはマジョルカで家長とともにプレーしていた。

 ◆チームカラー 青と白

 ◆本拠地 エスタディオ・エリオドロ・ロドリゲス・ロペス(2万4000人収容)。

 ▼カナリア諸島 スペイン本土から南西に約1100キロ、アフリカ大陸北西沿岸から約100~500キロの7つの島からなる群島。ラテン語で犬の島の意。本土と時差1時間で税金も安い。平均気温21度と常夏で「大西洋のハワイ」と称される観光地。テネリフェ島は面積は東京都とほぼ同じ2034平方キロ、人口約89万人。ラスパルマスのグランカナリア島は1560平方キロ、約85万人。両島の中心都市の直線距離は約90キロ。諸島全体では面積は宮城県とほぼ同じ7450平方キロで、人口約210万人、うち在留邦人200人弱。年間1000万人が訪れる観光と、バナナやタバコなどの輸出が主な産業となる。