小林祐希、地獄の2月「甘くない。絶対生きてくる」

ヘーレンフェインMF小林祐希

<オランダリーグ:ヘーレンフェイン3-0ローダ>◇25日(日本時間26日)◇ヘーレンフェイン

 ヘーレンフェインの日本代表MF小林祐希(24)は、3-0で快勝したローダ戦にフル出場し、リーグ戦6試合ぶりの白星に貢献した。

 最後に勝利したのは1月14日のデンハーグ戦。2月は3連敗と苦しい1カ月だったが「俺がこのまま苦しい時期を経験せずにそのまま3位とかでフィニッシュしていたら、俺は逆に調子に乗っていたかもしれない。やっぱり甘くない。これからのヨーロッパでの生活に絶対生きてくる1カ月だった」とポジティブに話した。

 小林の一問一答は次の通り(取材 エリーヌ・スウェーブルス通信員)

 --久々の勝利

 良かったです。それはほんとうれしいです。ちょっとそっち(OBの観戦)のことに気が行っちゃってて。

 --ファンニステルローイが見に来てる

 はい。彼と会う時間を作ってくれるって、クラブがなんかすごい俺に優しく。『祐希、レジェンド知ってるか』みたいな。え、マジで、みたいな。ちょうど家族も来てるし。まあ、家族は知らないと思うけど。みんなで会えたらいいなと話をしていたら『じゃあ、会わせるよ』って。

 --先週とは表情が違う

 やっぱりね、どんな内容でも勝ちが一番ですよね。選手にとっては。やっぱり(5戦勝ちなしで)スタジアムの雰囲気があんまり良くないのを試合中に感じていたので。やっぱり、相手が退場していて、相手を釣り出すためにボールを回していると、前に行けよ、みたいな。あーっていう周りのストレスを感じたから。いやいや、俺らはもう大人のサッカーをしているんだよ、後半戦だしっていう気持ちでやってました。

 --ペースを落としてって周りにジェスチャーしながらやってたけど、ディフェンダーの選手たちはどうだった

 彼らは早くサイドにパスをしたいんですよ。攻めたいんですよ。監督がサイドを使えってセンターバック2人に言っているから。あいつらは言われたことをやりたいんですよ。でも、今日はサム(ラルソン)もアルバ(ゼネリ)も(相手に)引っかかってたじゃん。

 別にそこで無理に突っ込ませる必要もないし。相手は1人退場しているし。そこは、落ち着けって言うか。いいから、監督が言っていたって勝ち点3を取れば監督は何も言わないからってことを言いました。

 --11番(ラルソン)と13番(ゼネリ)への依存度が高すぎるのか

 依存度が高いっていうか、監督がそこの1対1をしてほしいんですよ。一番リスクがなくて、仕掛けられるポジションだし。あいつら、自信を持ってやっているし。けど、前半はほぼ引っかかってて、サムとかも。切り替えが遅かったから、ハーフタイムに言いましたけどね。いいよ、別に仕掛けるのは、でも、それをカバーしてるのは誰だって。

 --得点シーンの前のFKを取った時の前のプレー。あのときは2番(マルツォ)が変なボールを蹴って9番(グーチャンネチャド)のところで引っかかって。小林選手のところで落ち着かせたっていうところから

 あれも、相手がそんなに寄せてこないから、出来たけど。あれがしっかりと頭で競りに体ごとつぶしにくるような相手だったら、ちゃんと競りに行ったんですけど。相手は距離を取って、あんまりグイグイと来なかったんで。これはいけるわと思って。

 --ますますああいった場面での余裕ができてきた

 ああいうのをやると拍手してくれるからうれしいですよね。日本だったら当たり前のように捉えられて。あそこであれはすごく緊張しますよ。緊張というか難しいですよ。でもサラッとやって、サラッとプレーを展開させるっていうのに対して拍手が来ると、なんかうれしいなって。

 このポジションでも楽しさが見つけられるなと思いますよね。ほんとはもっと前に行きたいんですけど、このポジションでの楽しさを見つけるという意味では、サポーターが分かってくれるのはすごいうれしいです。それが得点につながるとか。得点につながらないかもしれないけど、チームが自信を持つというか。それが、充満してくれればいいかなと思いますけど。後は、ちょっとホッとしましたね。ほんとにね。

 --前回、みんなで食事会やるって言っていたが

 行きました、行きました。

 --その効果が出ている

 いやー、わかんないですけど。あの後、トウェンテ戦の後、2連休になっちゃって。急に。ほんとは16人来る予定だったんですけど、8人。半分になったんですよ。みんな(連休になったから)国に帰るとかで。でも、8人集まって、初めての鉄板焼きってことで。みんな盛り上がってたし、日本はやっぱりクオリティー高かいな、みたいな。また行きたいって言ってくれてたし。

 それをチームのみんなが聞いて、なんで俺は誘ってくれねーんだみたいなやつが出てきたり。監督が、こうやってみんなを連れて行ってくれるのは、すごい良いことだって監督が言ったり。こういう映像を作る人たち、オーガナイズする人たちがね、今日はマッチデーポスターは俺がど真ん中で写真作ってくれたんですよ。これは、そうやって若いやつらというかチームメートを誘って、ご飯に行ったり、練習中とかロッカーとかプライベートでの振る舞いを見て、みんな祐希がリーダーだって思っているからという意味でやってくれたって。メールをくれて。ああ、そうやって思ってくれているんだったら、俺がやっていることは、少しはプラスになっているのかなって。

 --メールをくれた人は

 マルコ。マルコは、映像をいつも、インスタグラムとかツイッターとかフェイスブックとか更新をしている人。

 --日本料理ってちゃんとしたもの。なんちゃってもの

 いやいや。

(ここでチーム広報がきて、ファンニステルローイは行っちゃったよ。次の機会にねと告げられた)

 えー。じゃあ次ね。

 --じゃあ、エデゴールとかにもアドバイスしたりするのか

 いや、俺はプレースタイルのことについてアドバイスすることはないですね。アドバイスはしないです。でも、試合中にこうしてとか、こうした方が俺らはうまく行くからこうしようっていうのはあるけど。だって、(エデゴールは)18歳だけどA代表に入ってやっているわけだし。プライド持ってみんなやっているし、それは俺も一緒だし。

 俺にアドバイス的なことをしてくる人は別にいないし。お前はお前のプレー、俺は俺のプレー。それはもちろんチームのためにみんなが能力を出せばいいだけで。アドバイスなんてそんな大それたことはしないです。チームが良くなるためにもう少しこうしてほしいとか。要求はしますけど。彼は彼の能力を出せば良いと思うし。

 でも、90分使われない(後半32分に交代)というのは、彼も考えないといけないのかもしれないですよね。ハードワークとか、裏に抜け出す動き、あと守備で五分になった時。もしくは、6割で負けているけどマイボールにできるとか。というふうになっていくと90分使われる選手になっていくんじゃないかなって。10番のポジションがあんなにすぐ交代させられちゃってたらね。

 10番って、代えられないっていうか。こっちだと6番とかスタイン(スハールス)とか、なのかなっては思うけど。前の方は頑張って前半から飛ばして疲れちゃうというのがあるのかもしれないけど。

 マルティン(エデゴール)とかは、せっかくビッグクラブ(Rマドリード)からレンタルで来て。彼にとってみればここは小さいクラブかもしれないけど、そこで王様になれないと帰った時に、もちろんプレーできない。それは彼の課題だと思うので。でも、まだ18歳だしね。日本で言ったら、高卒でまだ1年目にもなっていないくらいだから。これからいろいろ経験して。オランダで、俺は、彼はすごく良いところを選んだなと思うので。1点決まればね。またなんか乗ると思うので、決めさせてあげたいですけど。

 --もっとペナルティーボックスに入れとか言わないのか

 あのー、みんな思っていると思いますけど。だけど、言われてやるのと、気づいてやるのとでは、なんか、染み付き方が違うっていう感じが。俺がそうだったんで。日本にいる時に、ボックスに入ることに執着というか、意識し始めたのは、ほんとにここに来る前の半年間くらいだったんで。それでも少なかったし。

 だから、それは言ってどうこうじゃなくて、一本ペナ(ペナルティーエリア)の中でこぼれてきたのをドンって決めちゃったりしたら、ペナの中に入ったらボールが来るわっていうのを覚えて、ドンドンとチャンスに良いところにスッと入っていくと思うので。

 サムとかアルバとかはペナの中にバンバン入っていくしね。そういうのを見習って、マルティンももうちょい。ボール回しがうまいとかボール扱いがうまいじゃなくて。サッカーがうまいって言われるように頑張ってほしいなって。それも上からになっちゃうけど。上から言っているわけじゃなくて、ほんとに応援したい、サポートしたいというふうに思っています。

 それはマルティンだけに限らず。他の若い選手も。ペレ(ファンアメルスフォールト)もそうだし。1試合しか出ていないらしいんですけど、フラッピー(ミチェル・フラップ)。俺はすげー良い選手だと思うので。彼とかも、出てくれば面白くなるかなとは思います。

 --前半はシュート数が、ローダが8本に対して5本。後半は15本で相手が0。前半は相手は小林選手のところに結構チャージに来ていたのでは

 相手の7番のキャプテンの人が、消せ消せってみんなに言ってて。でも、フリーな時はあったんですけど。ちょんとズラしてちょん、ちょんと出してくれればよかったんですけどね。でも、なかなか通せない。ピッチがすごく悪いから。俺に悪いボールを出したくないから、みんな出さなかったというのもあるかもしれないですけど。

 もうちょい出してくれても良かったかなと。後半はそれが入ってきたので。ハーフタイムに相当みんな(監督に)言われて。祐希に出せって。祐希も声出せって。みんな俺を使うイメージで。そんな中、ラッキーなことに(相手が)1人いなくなってくれて。ボールもより触れるようになったし。

 1点取った時に、もうこれは今日は何が何でも勝ち点3だと思って。無理に攻めるというより、勝ち点3を意識した結果、2点目来たし。後半はかみ合ったかなと思いますけど。

 --前にモルテン(トルスビー)がボールを怖がっていると言ってたけど。

 いや、怖がってますよね、まだ。相手が退場してからしか彼はボールを触れてないでしょう。相手退場して、(中盤とDFラインを)4-4(4枚-4枚の)ブロック敷いて1人余っているだけで、そうなると誰でもボールを受けられるから。もう1個奥に、相手のセンターバックとサイドバックの間にポンとモルテンが立ってあげれば、アルバがもっとフリーになるのに。

 それは自然に分かるとは思うんですけど。彼も必死になっちゃうから。でも、彼の良さはそこじゃないし。ファイトするところとか、一生懸命戻るところとか。頑張って戻ったり、頑張って出ていったりというのが、彼の良さなんで。そんなに悪いところばっかり探して言うことはないと思うし。俺は彼が頑張っているのは横で見ていて思うし。頑張っているんじゃないかなと。

 でも、自分の苦手なところを隠すためにボールを受けないというのも、自分を見せる手だと思うので。いいんじゃないですかね。そこでボールを失って失点した方が印象が悪いしね。多分、その分、俺が頑張ってやってあげれば。相手が強くなるとそれじゃあ厳しくなる時もありますけど。下位のチーム相手の時は、できるだけ頑張ってやってあげたいなと思います。

 --2月を振り返って。地獄の2月だった

 意外とあっという間でしたね。もちろん悔しいし勝ちたいという気持ちが毎試合持っていますけど。でも、その中でも次、次ってやっていかないと。俺の中では切り替えというか、次、次っていうふうに、次の試合に集中できていたし。そのための一週間。いつも通りの一週間というか。別に前の試合を引きずるとかもなく。個人的にはできていたと思うんですよ。

 --映像を見ても良い試合はやっていた

 そうなんですよ。内容はね、良いんですよね。スタインが、久々にクラブハウスに帰ってきて。歩けるようになって。グラウンドにも少し顔を出せるようになって。ミーティングで言ってたことなんですけど。内容は全然悪くないと。ただ、こういう時期もあるから。

 (スタインは)見ていて思うのは、アルバ、サム、祐希、モルテン、マルティン、レザ、みんな1人に見える、みたいな。1人1人がただ頑張っているように感じる、みたいな。もっと一緒に、攻撃も守備もみんなでやらないと。誰かが、守備はお前の仕事だろ、攻撃はお前が行ってくれ、みたいなのじゃなくて。みんなで攻撃して、みんなで守備をするみたいな。それが、ちょっとずつかみ合えば、また戻るでしょみたいな。

 俺が思っていたことと一緒で。俺もそういうことを言いたいんだけど、(オランダ語が)うまくないから。なかなかね。言えなかったんですけど。同じようなことを言ってくれたから、良かったなと思って。でも、相手がこういう相手だから。勝って、また気持ち的にも楽になれたっていうのは、選手、特に若い選手にとっては大きいんじゃないかなと思います。

 --勝てば全部が良い方に変わることもある。これがきっかけになる

 前半戦はそんなに波がなくて。ずっと良い状態をキープできて。今は、ポジティブに言うとすごく勝てない時期を経験できて。みんなどういうふうにすれば次、勝てるかなって考える時間ができたんですよ。長かったけど、1カ月。絶対そういう時間って必要なんですよね。人生においても、別にサッカーうんぬんじゃなくて。

 若い選手がこれからビッグクラブで活躍するために、良くなかった時期に俺はどうしていたかなっていうのを振り返る時に、あのヘーレンフェインでの2月、すごい苦しかったけど、みんな楽しくやってたよなって思い出すだけで、すごい楽になると思うんですよ。精神的に。だから俺はすごいポジティブに捉えています。みんなで、俺がこのまま苦しい時期を経験せずにそのまま3位とかでフィニッシュしていたら、俺は逆に調子に乗っていたかもしれない。やっぱり甘くないなっていうのをここで知らされて。でも、やっぱり頑張んないといけない。どうやればって考える時期が1カ月間もあったから。

 これは俺がヨーロッパで何年プレーするかわからないけど、これからのヨーロッパでの生活に絶対生きてくる1カ月だったなっていうふうには、昨日の夜に寝る前に思っていたので。昨日の夜に明日の試合が勝とうが負けようが100%でやって、できれば勝ってみんなで笑いたいな。それが俺にとって良い時期だったなと後から言えるようにしたいなというふうに整理して、寝たらすごい気持ちよく寝れたんで。朝は目覚めが良かったし。俺にとって大事な1カ月だったなと思います。

 そしてこれからまた連勝街道、そのレールに乗って、代表に行けるなら行って、帰ってきてからまた勝ち続けられればなと思います。

 --前にちょっと勝てなくなったからってスタイル崩したら地獄が待っているって言っていた。スタイルを崩さず、我慢し続けた

 スタイルを崩すのが嫌いな監督で良かったです。さほどメンバーも変えずに、言うことも変えずに。俺らは同じことをやるっていうふうに彼(監督)が言っているので。俺はもう彼が言っていることをやるだけです。