甦ったレスター、岡崎慎司の言う“初心”とは?

リバプール戦でレスター岡崎慎司(右)は相手選手と競り合う(撮影・PIKO)

 プレミアリーグで低迷するレスターが、息を吹き返した。昨季チームを優勝へと導いた功労者のラニエリ監督を解任するという荒療治。そして迎えた2月27日のリバプール戦で、これまでとは見違えるような躍動感あるサッカーで強敵を圧倒し、3-1と勝利した。2017年に入り、7試合目での初白星だった。

 昨季の快進撃を彷ふつさせたチームには、いったい何があったのか? 先発出場でチームの勝利に貢献したFW岡崎慎司(30)の試合後の言葉に、チームの変化が見て取れた。

 岡崎 「たぶん、みんなモヤモヤしていた部分があった。そういう意味では、きっかけというか、何かのきっかけで、監督がいなくなったことは自分たちの責任だと思うんですけど、監督がいなくなったことで、やらなければいけなくないという意識がチームに芽生えたのではないか。もう追い込まれたわけじゃないですか、周りもいろいろとたたかれる部分もあった。やらなければいけない状況に追い込まれて、チームもまとまったのではないか」

 シーズンオフの昨年7月、MFカンテがチェルシーへ移籍したことが大きく響いた。中盤の底から幅広い動きと豊富な運動量で、攻守にわたってチームを支えた「奇跡」の立役者。機動力に劣るモーガン、フートのカバリングができる選手で、かつてレアル・マドリードでジダンを支えたマケレレのような存在。おかげでチームは安定感を保てた。その後釜を確保できなかった。

 重要なピースが抜けたことで、戦術も定まらない。システムは4-4-2、4-3-3と猫の目のように変わった。前から行くのか、引くのか、ボールをどこへつなぐのか? また、新加入のFWムサ、スリマニの起用によって、岡崎はベンチもしくは1・5列目で使われた。自然とチームには迷いがあった。それがラニエリ監督の解任によって吹っ切れたようだ。

 岡崎 「自分が出ようが、出まいが、チームの競争があれば、ほんとにいいと思うし。このまま行くのか、監督が変わるのか、全然まったく変わらないですけど。チームとして、みんながモチベーション全開の状態で練習したり、チームとして試合したりというのがなくなりつつところがあったので。それがあるひとつのきっかけ、監督がいなくなるということで、みんなに責任があったと思う。監督なので全部責任を背負って、やめなければならないということで、自分たちにも悪かったと思う部分もあるし、それがこうチームとしては、それでも前を向いてやらなくてはならないんで、それがこう一つになったと思うんですけど」

 シェークスピア監督がリバプール戦の先発に送り出した11人はMFヌディディを除いて昨シーズンを戦った顔ぶれ。チームの気持ちは自然とまとまり、それが得点という形となった。スルーパスから抜け出したFWバーディーの1点目、相手ゴール前に押し込んで、MFドリンクウオーターのミドルシュート。そして後半早々に再び相手ボールのカットから素早く縦へバーディーを走らせて奪った追加点。昨シーズンさながらのレスターの姿がそこにはあった。

 岡崎 「もう前からいくしかないという感じ。今まで、僕も感じていたけど前からもっとプレスしていけば、絶対にはめられると言っていた部分を、今日はみんながいってくれたので、自分もやはりやりやすくて。2個追えば、確実にそれが還元できるという。今までは2個追っても、あんまり意味がなく終わると、モチベーションも下がるじゃないですか。それが今日は2個追うとそれがロングボールを誘って、それで切れるというところで。かなりチームとして良い戦いができたんじゃないかと思います」

 リバプール戦の戦い方で自分たちのサッカーを思い出した。昨季「格下」と目されたレスターは、「ひたむきさ」を売りにプレミアリーグの強豪に立ち向かった。ハードワーク、そして勝利のために一丸となれる団結力が数々の勝利をもたらした。

 岡崎 「とにかく整理したのは、相手チームじゃなくて、自分たちが前から行こうっていう。たぶん簡単なことだったと思うんですよ、言ったことは。でも、みんなもたぶん行きたかったと思うんですよね。心の中では。だからそれが解放されてというか。その辺はあったと思う。色々と試行錯誤した分、またチームが整理されて、自分がそこにチャレンジできるっていうのは、やっとスタートできるっていう部分が、自分にはあると思います」

 順位は17位から15位へと浮上した。まだ降格圏はすぐ下にある状況だが、リバプール戦の一戦はただの勝ち点3には終わらない。残るシーズンへの視界は、一気に開かれたようだ。

 岡崎 「このまま、残り12試合、このまま行こうという道が見えた勝ち方。そうなった時のレスター強いと思う」

 世界中を驚かせた「奇跡のチーム」レスターは、大事な“初心”を取り戻した。

【英国通信員】