ヘント久保裕也ブレークの理由、チーム参謀も失神…

FW久保裕也について語るヘントのペーター・バレット・アシスタントコーチ

 【ヘント(ベルギー)15日=木下淳、エリーヌ・スウェーブルス通信員】ベルギーリーグのプレーオフでヘントFW久保裕也(23)が、14日のシャルルロワ戦で1月の移籍後10点目を挙げた。日本人初となる2クラブでの同一シーズン2度の2桁得点を達成。1-1で引き分けて優勝の可能性は消滅したが、わずか半年でチーム得点王にも追いついた。ヘントでアシスタントコーチを務めるペーター・バレット氏(56)が、久保の成功の鍵を解説した。   ◇   ◇

 なぜ久保は、加入半年で10得点にスピード到達したのか。2年前、ヘントの115年ぶり優勝に貢献した参謀バレット氏に成功の理由を尋ねると「まず練習ばかりしているね」と明かした。久保の1日は朝8時半から始まる。「全員で低脂肪の朝食を取り、10時半の練習までは自由時間。クボは必ずジムに行く。2時間を超える練習の後も必ず居残りするし、さらに追加メニューをフィジカルコーチに要求したようだ」と練習量の多さに目を見張った。

 日本なら監督に次ぐヘッドコーチ格のバレット氏。同じベルギーのゾルダーで鈴木隆行、スタンダールでは川島永嗣、永井謙佑、小野裕二を指導した。「多くの日本人と仕事してきた」彼いわく「中でも久保は最もシャイだ」。まだ移籍半年のため語学力が影響している。ヘントの「公用語」は英語。ミーティングも練習も、スイスに3年半いて習得したドイツ語と違い「まだ英語では話そうとしてないね。ただ、戦術の話では『はいはい』と聞き流さず、必ず『この場合は?』聞き返してくる」という。

 言葉は少なくてもパスは集まっている。「クボは、ピッチでは動きで雄弁になるんだ。我々は試合ごとに戦術を変え、多くのコマンド(指示)を出す。普通の外国人選手は苦しむが、クボは、本当は言葉を分かってるな、と思うほどに理解度が高い。位置取りが良く常にボールが出せる状態にいて、味方もパスを出したくなる。ペナルティーエリアにも深く潜り込める」。久保本人も「良い位置でパスを受けられて、来たチャンスを確実に決められている」と水が合ったようだ。

 7日オーステンデ戦の前には「彼に失神されられたんだ」と明かした。直接FKの練習で、久保のキックが壁に入ったバレット氏の側頭部を直撃。「気付いたら外で寝ていた。今も耳鳴りするほどの力強いシュートで、90キロを超える私が意識を失って倒れたのは生涯で初めてだ。今後はFKも蹴るだろう」と笑った。FKではなかったが、久保はシャルルロワ戦でPKを任され、2桁得点に到達。本来キッカーのミリセビッチから譲られたことが、信頼度の高さを物語っている。

 移籍金はクラブ史上最高額の350万ユーロ(約4億2000万円)も「決して安くはなかったが、今季の補強で間違いなくNO・1。我々に後悔はない」。W杯ロシア大会アジア最終予選イラク戦(6月13日)が控える日本代表でも「ヘントとは違って右サイドでプレーしているが、さらに力になるだろう」とベルギーでの進化に太鼓判を押した。