ハリル監督の電撃辞任は選手、会長との不和が原因

バヒド・ハリルホジッチ氏(18年4月撮影)

フランス1部ナントの監督を現地2日夜にも辞任すると報じられた元日本代表監督のバヒド・ハリルホジッチ氏(67)について、同国のスポーツ専門紙レキップは1日付でクラブとの不和を詳報している。

まず、電撃退任はナントの地元紙ウエスト・フランスが一報だったとした上で「ナント側の、ほぼ全員が待っていたニュースが暴露された。その後、ナントの合宿に笑顔が戻った。このテーマは内部で冗談の対象にさえなっている」と厳しい状況を説明。「時間の問題だ。予想できないような事態の急変がない限り、地方紙によって予告されたように、フランス・ボスニア人監督は2日の親善試合ジェノア戦の後、ベンチから去るだろう」と報道した。

1カ月の合宿を終え、リーグ開幕まで2週間を切った驚きのタイミング。しかし、レキップは「ストーリーの結末は、かなり前から描かれていた」という。「偽りのポーカー」との中見出しで、まずは「スポーツビジネスにおいて無知で、監督たちの長期的維持が難しいことで有名なワルデマル・キタ会長」とクラブのトップを批判した上で「一方のハリルホジッチ監督もカリカチュア(怒り狂う場面が、やゆされることが多い風刺画)だけではない非妥協性で有名。監督の退任は誰の気も悪くすることはなかっただろう」と断じている。

選手との決裂もあったようだ。「昨季、12位でリーグ・アン(1部)残留に導いたものの、信頼を得るケースではなかった。(ルーマニア代表)GKタタルサヌのように、監督の退任を待たなかった(先に去った)選手もいるし、ほかの選手も指揮官の辞任しか待っていない」とした。

ナントは、ハリルホジッチ氏が現役時代に活躍したクラブだが、監督となった今は「行政部門の社員を、いたわらない。人事部長のフィリップ・マオ氏とは7月11日に起きた口論以降、電子メールしかしなくなった」とのプチ情報まで網羅されている。

ハリルホジッチ氏が、レアル・マドリードの日本代表MF久保建英(18)獲得を狙っていたとの情報に関しては「キタ会長が彼のリストから選ばなかった。監督は50人ものリストを示したが、この夏にナントが獲得した8人は、すべてリスト外から」と決定的に方針が違っていた。そのリストには久保のほか「ロリアンのアレクシ・クロードモリス、ニームのドゥニ・ブアンガ、セビリアのジョリス・ニャニョン、フランクフルトのシモン・ファラット、ゲンクのヤニス・ハジかギャンガンのジョルダン・イココ」の名前があったという。

そんな状況を受け、練習再開から雰囲気は重かったようだ。7月19日の親善試合ニオール戦の数時間前には、キタ会長とフランクGM代理(会長の息子)と監督が会談。しかし、決着はつかなかった。ハリルホジッチ氏は月給15万ユーロ(約1875万円)~20万ユーロ(2500万円)で2年目の指揮を執る予定だったため、退任となれば補償を求めるつもりだったが、会長らは違約金を支払うことを拒否している。

ハリルホジッチ氏が、モロッコ代表監督への転身を臨むモロッコ協会関係者とパリで会った情報もつかんでおり、会長側からすれば「監督がクラブを去りたいのであれば、自らの意思。違約金なし」となる。そもそも解任には、体制整備のために450万ユーロ(5億6250万円)かかると試算しており、追加の違約金まで払う気はなさそうだ。この点については、レキップが翌2日に「両者を満足させる内容で決着した」と伝えている。双方合意の上で、ハリルホジッチ氏の退任発表を待つ状況になっている。(松本愛香通信員)