バレージ氏、52歳で現役カズ「試合見た。素晴らしい」

サイン入りのACミランのボールを手に、笑顔を浮かべるフランコ・バレージ氏(撮影・村上幸将)

<ACミラン フランコ・バレージ氏が語る…その3>

ACミランとイタリア代表で一時代を築いた、DFフランコ・バレージ氏(59)が、ACミラン・アカデミー東京の東京スタジアム校が11月19日に開校するにあたり、来日した。バレージ氏がニッカンスポーツコムの単独取材に応じた。第3回は、1994年(平6)のセリエA開幕戦で対戦した、当時ジェノアでプレーした横浜FCカズ(三浦知良=52)への思いと、日本へのメッセージ。

【聞き手・構成=村上幸将】

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バレージ氏といえば、日本のサッカーファンにとって忘れられない瞬間がある。94年9月4日の開幕戦としてACミランのホーム・サンシーロで行われたジェノア戦で、前半28分に同氏はカズと空中戦で競り合い、頭がカズの顔面に当たった。カズは、鼻骨骨折と眼窩(がんか)系神経損傷の重傷を負い、長期離脱を強いられた。アジア人初のセリエA選手だったカズの、セリエA初戦での離脱は日本でも大きく報じられた。

バレージ氏 イタリアなどで会う度に、私たちは良い関係を保っています。あの出来事があった後も、いい友人関係なんです。

-カズは52歳の今も、現役でプレーを続けている

バレージ氏 まず、素晴らしいことだと褒めたたえたいです。あの年齢で、まだプレーできる精神力は、素晴らしいと思う。彼の試合も見た。素晴らしいと思ったよ。

カズとは、前回来日した13年6月9日に東京・国立競技場で行われた、日本代表OB対イタリア代表OB戦でも対戦。試合中はマッチアップし、試合後は一緒にスタジアムを回った

バレージ そうそう。スポーツマンシップにのっとって、試合後は紳士的な対応をするんだよ。(試合に招かれて)とても光栄でした。

-現役時代さながらのラインコントロールを披露した

バレージ氏 ハッハッハ…いやいや、それは、ないだろう(笑い)

現役時代のプレーに話が及ぶと、自ずと言葉に熱がこもる。バレージ氏は自らのプレーのあり方について熱弁を振るった。

バレージ氏 ピッチの上では、そこが自分の場所、私の全てを注いでいるところだと感じていたんだ。94年のワールドカップ米国大会の決勝を見たかい? あれが僕、フランコ・バレージだよ。

-ブラジル代表のロマーリオ、ベベットの2トップを、延長戦を含めて120分間、完封した

バレージ氏 あのプレーこそ、まさに私自身を表したものなんだよ。

-1次リーグのノルウェー戦で、ひざを痛めていたが、決勝に間に合わせて、あの2人を抑えた

バレージ氏 そうですね。そういう状態では、自分の持っている気持ちで戦ったんだよ。まぁ…ひざは痛かったんだけど。その先が知りたかったら来年、本を出すので、ぜひ読んでよ。

-その先を聞くのも、今回のインタビューの目的。決勝でPKを外し、負けた後「サッカーは残酷なもの」との名言を残した

バレージ氏 全てのエネルギーを、最大限に集中させて戦ったんだよ。

1997年に現役を引退して22年。59歳になったが、背筋はスッと伸び、スタイリッシュだ。熱い言葉同様、変わらないスタイルをキープする秘訣(ひけつ)は何だろうか?

バレージ氏 軍隊の隊長のように、背筋がピンと伸びているだろう? イタリア人は、現役を引退した後も運動したり、走ったり、フットサルも生活に根付いているので、普段の生活スタイルによると思うね。まぁ、人種にも太りやすいとかあるだろうし、しょうがない面はあると思うよ。

-最後に、日本のファンにメッセージを

バレージ氏 全てのサッカーファン…特にミラニスタに愛を込めて…もし、お子さまを、ACミランアカデミー東京に送りたいという親御さんがいらっしゃいましたら、ぜひ、よろしくお願いします。

-DFに関心を持つ

日本の子どもたちにもアドバイスを

バレージ氏 まず、DFになる以前にサッカーに対する情熱、喜びを持ってプレー、練習していくことが大事。どのポジションになったとしても、自分のポジションに慣れていくことも重要だよ。

バレージ氏は「日本は毎回、ワールドカップに出場し、国内のリーグのレベルも上がっている。確実に成長している。セリエAに日本人が増えれば良いと思う」と期待の言葉を残して、日本を後にした。