【欧州CL】Rマドリードの強さとは「したたかさ」クラブのDNAにまで昇華/浜野裕樹リポート

<UEFAチャンピオンズリーグ:Rマドリード2-0ドルトムント>◇1日(日本時間2日)◇決勝◇ウェンブリー・スタジアム(ロンドン)

レアル・マドリード(スペイン)がドルトムント(ドイツ)を2-0で破り、2シーズンぶり15度目の優勝を飾った。2014年W杯ブラジル大会優勝のドイツ代表を「チーム・ケルン(試合分析担当)」として支えた浜野裕樹氏(35)が、大一番を現地ウェンブリースタジアムからリポートした。

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6月1日20時。イギリスの首都、9万人が見守る中、ロンドンの聖地ウェンブリーで今年のCLの決勝が行われた。最多14回の優勝を誇る常勝レアル。対して、選手の知名度は劣るかもしれないが、計算されたポジショナルプレーと攻守の切り替えを武器に強豪を実力で倒してきたドルトムントが決勝の大一番で相まみえた。

「したたか」とは「粘り強い」「しっかりしている」といったポジティブな意味と、「計算高い」「しぶとい」といったネガティブな意味の両方を持つ言葉である。

「したたか」は漢字で表すと、「強か」もしくは「健か」である。どちらも同じ意味だが、実は少しだけニュアンスの違いがある。精神的な強さは「強か」で、身体的な強さは「健か」で表すのだ。

レアル・マドリードというチームは強かという言葉を選手1人1人が体現し、クラブのDNAにまで昇華させたチームである。

試合開始からボールを保持したレアルが前線の4枚の選手に完全な自由を与え、ポジションチェンジを繰り返しながらゴールに迫るが、ドルトムントのコンパクトな4層に重ねられた(4-1-4-1)の守備を崩せずにシュート2本(枠内無し)で前半を終える。

チャンスになったのはボールが右サイドにある時に斜めにサイドチェンジを行い、ビニシウスがスピードに乗った状態で1対1の状態を作れた時。それに対してドルトムントはボール奪取時に奪った場所から斜めにボールを動かしていく事を意識し、サイドに開いた選手が相手の裏のスペースに斜めに走りこむこと、失ったボールを敵陣で即時奪回することを徹底し、決定的なチャンスを作り出す。

シュート数は8対2でドルトムント。枠内シュートは2対0でドルトムント。試合内容はドルトムントが相手をダウン寸前まで追い詰めるが、レアルも耐えてしのぎ切る。この試合でも90分間を通して監督とアシスタントコーチが常に試合を有利に進めるためにピッチ沿いで話し合い、チームに伝え、リアルタイムで対応していく様子が印象的だった。

後半に入り、60分過ぎからドルトムントのボール保持時/非保持時のリズム、ペースが落ちてきたことが目に見えてスタジアムに伝わる。熱狂的なドルトムントファンは声量を増やし、チームを鼓舞する。

レアルがその機会を見逃すはずがなくスペースが空いてきたことを見極め、PA外からのシュートやファウルを得た後に何度もセットプレーの機会を得る。

74分、左からのコーナーキックを合わせたのはチームで一番背が小さい一人のカルバハル。相手の前に器用に入り、完璧なタイミングで合わせて先制。その後も同じ形からビッグチャンスを迎えた事はレアルがいかなる状況からでも相手を仕留めるために全ての準備を怠っていないことの表れだろう。

残り10分のタイミングで攻撃の選手を増やし、オールインの賭けに出るドルトムント。その直後にミスから2失点目を喫し、万事休す。

これぞレアルという戦い方で15回目の栄冠を手にしたレアル。下馬評が低かったドルトムントの華麗なサッカーがレアルをここまで苦しめたことを誰が予想できただろう。

この日を最後にチームを離れる6回のCL優勝経験を持つクロース、選手として2回、監督として5回のCL優勝経験を持つアンチェロッティがまるで初めて優勝したかのように喜ぶ姿を見た時に「レアル・マドリード」というクラブの強さの秘密を見たような気がした。

来季から従来の32チームから36チーム制となり、大会方式のリフォームが行われるCL。いくらサッカーが商業化に舵を切っても失われてはいけない本質を、今回の決勝で見られたことを幸せに思う。(UEFA・A級コーチ)

◆来季の欧州CL 来季から出場チーム数が現行の32から36に拡大。1次リーグ(リーグフェーズ=LF)は異なる8チームと、ホームとアウェーで4試合ずつ計8試合行う。8位以内が16強による決勝トーナメント(T)に進出。9~24位は決勝Tプレーオフへ。25~36位は敗退となる。9月からのLFの対戦相手は抽選で決定。36チームが9チームずつ4つのポットに分けられ、第1ポットは23-24年優勝のRマドリードとUEFAランキング上位8チーム。各ポットから2チームずつ抽選で選ばれ、1チームとホームで、もう1チームとアウェーで対戦する。決勝Tプレーオフはホームアンドアウェー方式で勝者が16強進出。25年3月に始まる決勝Tは従来通りで、決勝は同5月31日にミュンヘンで行われる。

◆浜野裕樹(はまの・ゆうき)1988年(昭63)7月4日生まれ、横浜市出身。日体大を経てケルン体育大に留学。「チーム・ケルン」の一員として2014年W杯優勝のドイツ代表で試合分析を担当。UEFA・A級ライセンス保持し、ドイツ生活12年目。