大阪国際女子マラソンを日本歴代7位の2時間22分17秒で制し、リオデジャネイロ五輪代表が当確となった福士加代子(33=ワコール)が、最後の選考レース・名古屋ウィメンズ(3月13日)に出場を検討していることが1日、分かった。名古屋での他選手の結果次第で、代表落選の可能性がわずかにある福士陣営が、明確ではない日本陸連の選考基準に対する問題提起の意味もあり、五輪当確選手による前代未聞の選考会再出場を視野に入れている。

 福士が「リオ決定だべえ~」と絶叫した大阪国際女子の優勝から一夜明け、前代未聞の計画が明らかになった。福士が所属するワコールの永山忠幸監督(55)は「日本陸連から『(五輪)当確』という言葉がない。決まったと思っても決めていただけないのであれば、むちゃを承知で名古屋にエントリーします」と明言した。この日、名古屋側に電話を入れ、明日3日の登録締め切りまでに書類を提出する意思を伝えた。福士本人も了承したという。

 福士は2時間22分17秒で優勝した。五輪派遣に日本陸連が設定した2時間22分30秒を突破。タイム、順位、内容ともに文句なし。その選手がわずか1カ月半後のレースに出場するのは前代未聞だ。だが名古屋に出場した複数選手が設定記録を切れば、福士が落選する可能性はゼロではない。つまり福士が実力行使し、名古屋で2位以内に入れば必然的に五輪決定となる。

 日本のマラソンは複数のレースから代表を選考するため、以前から選考基準が明確ではないと指摘されてきた。日本陸連の酒井強化副委員長も前日に「名古屋でそれ以上の成果を出す選手がいるかもしれない」と言葉を濁していた。

 名古屋で代表2人が誕生する場合を想定し、永山監督は「名古屋の日本人2位というのは日本人1位に負けた選手。優勝した福士が選ばれず、名古屋の日本人2位が選ばれるなんてことがあってはいけない」と述べ、さらに「福士の名前を(五輪代表に)残すために休ませないかもしれない。準備を進めます」と言い切った。既に内定した伊藤をのぞく代表2枠は、3月中旬の陸連理事会で決まる。

 ◆福士加代子(ふくし・かよこ)1982年(昭57)3月25日、青森・板柳町生まれ。五所川原工高で陸上を始める。00年ワコール(京都)入社。トラック種目で04年アテネから3大会連続五輪出場(12年ロンドン1万メートル10位など)。13年世界選手権マラソン銅。160センチ、45キロ。

<五輪選考をめぐる騒動>

 ◆92年バルセロナ 世界選手権4位の有森裕子と大阪国際で有森を上回る2時間27分2秒の松野明美が争う。松野は「私を代表に選んでください」と異例の会見を開くも、有森に軍配。

 ◆96年アトランタ 鈴木博美は大阪で2時間26分27秒と候補中、最高タイムを出しながら落選。一時は陣営が鈴木を強く推薦するなど論議を呼んだ。

 ◆00年シドニー 世界選手権で市橋有里が銀メダルで内定。その後、東京で山口衛里が優勝、大阪で弘山晴美が2位、名古屋で高橋尚子が優勝。3つの選考レースで2時間22分台の好タイムが続出。弘山が涙をのんで、早期内定に批判の声も出た。