陸上の17年世界選手権男子400メートルリレーの銅メダルメンバー、多田修平(22)が18日、関学大(兵庫県西宮市)の卒業式に出席した。「今まで実感なかったが、社会人になるんだな、と」。4月から住友電工に入社予定で、すでに練習拠点を関東に移し、東京都内で1人暮らしも開始している。

17年6月の日本学生個人選手権で追い風参考ながら9秒94をマークし、一気に注目を浴びた。同年の世界選手権で銅メダルに貢献した。さらに飛躍が期待された昨季は自ら「ダメなシーズン」と振り返る。それだけに社会人となる今季は心機一転の再スタート。「2年前を超えるシーズンにしたい」と意気込んだ。

年明けから大東大で練習を積む。指摘されたのが左右のバランスの悪さ。「左で全く蹴れていなかった」。矯正する体幹トレーニングを「地道に」行っている。その効果か、2月に米テキサス州で行われた室内競技の60メートルを6秒57で制した。順調にシーズンのスタートを切った。

社会人初戦は出雲陸上(4月20、21日)か織田記念(同27、28日)で検討中。その先の日本選手権、世界選手権を見すえて作っていくが、明確な目標として「9秒台を出さないと。今年はとにかく勝つことが目標」と掲げた。その先に東京五輪への道がつながる。

桐生祥秀に続く9秒台を目指し、男子スプリント界は活況だ。多田にとってはそれだけライバルが多い。「(ライバルの存在に)あせりもあるが、刺激をもらえる。レベルが上がっている中で勝ちたい」と勝利を重視する理由も国内での激しい戦いから生まれる。

1人暮らしで最も苦戦しているのが「自炊」という。ウェブで「簡単な料理」を検索し、取り組んでいるという。「生活も練習も自分で考えないとダメになる。どういう生活をすればいいか、陸上のことを考えながらやっていきたい」。かわいい顔立ちは変わらないが、学生気分はすっかり抜けていた。