全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝)が24日、宮城県松島町文化観光交流館前~仙台市陸上競技場の6区間(42・195キロ)で行われる。天満屋は東京五輪代表の前田穂南(23)、同有力候補の小原怜(29)、世界陸上ドーハ7位入賞の谷本観月(24)と強力なマラソン・トリオをそろえる。五輪マラソン代表は00年シドニー大会以降、前田で5人目。“マラソンの天満屋”が駅伝でも、9年ぶりの優勝可能な戦力で本番を迎える。

9月はまさに“マラソンの天満屋”月間となった。まずは15日開催のMGC。前田が、2位の鈴木亜由子(日本郵政グループ)に3分47秒、距離にして1キロ以上の大差で優勝し東京五輪代表を決めた。小原も3位に入り、MGCファイナルチャレンジで2時間22分22秒以上の記録を誰も出さなければ、前田、鈴木とともに五輪代表となる。さらに27日(日本時間28日)の世界陸上。ここでも谷本が粘りの走りで日本人最上位の7位入賞。天満屋の強さが際立った。

しかし武冨豊監督(65)は「クイーンズ駅伝の目標は6位」と設定。「うちはマラソンチーム。駅伝のスピードでは、優勝を狙うチームに勝てません」と控えめに話す。その根底にはマラソンを走ったばかりの選手たちに「今回は無理をさせたくない」という気持ちもあるようだ。

だが天満屋は、駅伝をマラソンの強化に活用してきたチームでもある。将来、マラソンで代表を狙える選手は入社2~3年目からクイーンズ駅伝の10キロ区間である3区か5区に抜てきして育成する。近年では前田が入社2年目の16年大会で5区(10・0キロ)に起用され、区間11位ではあったが、翌17年8月の北海道マラソン優勝につなげた。さらに前田は同年11月のクイーンズ駅伝5区で区間6位と好走し、翌18年1月の大阪国際女子マラソンでは2時間23分48秒の自己新での2位の走りを見せた。昨年のクイーンズ駅伝は、よりスピードの要求される3区(10・9キロ)での2位争いを制した(区間5位)。クイーンズ駅伝でスピードと勝負強さを磨きマラソンにつなげる。天満屋の強化方法を実証したのが前田穂南なのだ。

小原も入社当時は1500メートルの中距離ランナーだったが、駅伝の3区と5区で徐々に長い距離に慣れ、2度目のマラソンとなった16年名古屋ウィメンズで2時間23分20秒の快走を見せた。同レースでリオ五輪代表を決めた田中智美(31=第一生命グループ)に1秒差での惜敗だったが、マラソンでも日本トップレベルに躍進した。

谷本は昨年のクイーンズ駅伝1区で区間7位と好スタートを切った。3区の前田で2位に浮上し、終わってみればチームも2位と健闘した。昨年は小原が駅伝前に不調に陥りアンカーの6区に回らざるを得なかった。小原が好調で5区に入る状態なら、天満屋は勝負ができる。

9月のマラソンから約2カ月。武冨監督は「前田のMGCのダメージは小さいが、谷本が少し大きいかもしれない」と話す。天満屋が優勝争いに加われるかどうか。「マラソン組の回復次第」(武冨監督)だ。