女子短距離の土井杏南(24=JAL)がこのほど、電話インタビューに応じた。2回に分けて紹介する。上編ではコロナ禍の生活を語った。料理を始め、昨秋の世界選手権(ドーハ)の映像を繰り返し見て、今後の飛躍のイメージを膨らませたという。

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母校の埼玉栄高を練習拠点としている土井は5月中旬、グラウンドに戻ってきた。まず行ったのは普段の練習とは違う形だった。

「普段練習でお世話になっている埼玉栄高校が新型コロナウイルスの感染予防で休校のため、オンライン授業をするということとなり、(師事する)清田先生から協力して欲しいという依頼がありました。私としても、在宅で学習している高校生のために何かできればと思い、オンライン事業のコンテンツ作りに協力をし、その動画撮影のため、グラウンドに出ました」

その後、練習も再開した。いつもの明るい声で、振り返った。

「今までは公園などで練習していましたが、やっぱりタータンで走ると反発も違いますね。すごく楽しかったです」

自粛中の「お家時間」は、今まであまりやっていなかった事にもチャレンジした。栄養管理は母に頼っていた部分が大きかったが、「料理を始めました」と無邪気に笑う。

「最初は母に教わって、いろいろ作れるようになりましたよ。オムレツ、鶏胸肉の南蛮漬け、ゴーヤチャンプルー、サケのムニエル、カレーライス。あとパウンドケーキとかも作りました」

栄養管理にも気を配っている。

「ステイホーム中、やっぱり体は太りやすくなるので、摂取量と消費量を考えてます。鳥の胸肉を多く使ったり、オートミールも買いました。脂質は少なめとか。運動量に合わせて作るようにしています。レシピはクックパットでも調べてます」。

競技面ではトップ選手の映像を見ることに、時間を費やした。昨秋の世界選手権の女子100メートルを「回数は分からないぐらい」何度も見ていた。

「気が付いたら、朝から夕方までずっと見ていたり、していましたね。予選1組目からずっと。昼前ぐらいに予選を1時間ぐらい見て。お昼を挟んでから、準決勝を見て。また予選を見てから、決勝を見る、みたいな。時間があれば、ずっと見てましたね(笑い)」

目を引いたのは10秒71で2大会ぶり4度目の優勝を果たしたシェリーアン・フレイザープライス(33=ジャマイカ)。オリンピック(五輪)でも2個の金メダルを獲得しているママさんスプリンターは、身長が自分より約6センチ低い152センチ。ずっと憧れの存在でもあり、大きくない体をうまく使う姿は、最高のお手本とする。

「加速局面のピッチがすごくある。そこを工夫をして、マネしていきたいと思いました。また重心移動がすごく上手で、反発をうまくすごくもらえるのだと思います」

頭の中でイメージを膨らませ、成長の余地を探っていく。【上田悠太】

◆土井杏南(どい・あんな)1995年(平7)8月24日、埼玉・朝霞市生まれ。朝霞一中では11秒61の中学記録。埼玉栄高2年時に現在の自己ベストでもある11秒43の高校記録を樹立。12年ロンドン五輪に日本陸上界で戦後最年少となる16歳で出場。大東文化大を卒業後、18年にJAL入社。