山県亮太9秒台「手届く」空前の報道陣462人集結

練習後の会見で笑顔を見せる山県(撮影・松本俊)

 満員御礼のお返しは日本人初の9秒台で-。リオデジャネイロ五輪代表選考を兼ねた陸上日本選手権(パロ瑞穂)は今日24日に開幕する。12年ロンドン大会に続く五輪切符を狙う山県亮太(24=セイコーホールディングス)は23日、会場で最終調整。ライバル桐生祥秀(東洋大)が今月11日に出した10秒01超えに「手の届く位置」と自信をみせた。大会には空前の462人の報道陣が集結する予定だ。

 夕暮れ時の空の下で、入念なストレッチを受ける山県の姿があった。練習場で2時間ほど体を動かすと、そこから1時間半もかけて体をほぐした。少しの体の張りにも敏感に、人一倍長く決戦への備えを進めた。5、6月と10秒0台を2回、特に今月5日の布勢スプリントでは向かい風では日本最高となる10秒06。その好調さにも油断はない。「(10秒01は)以前は衝撃でしたが、いまは手の届く位置にある。手応えを感じてます」。ケアを終えると、さわやかに言い切った。

 ロンドン五輪後の不振の最中に台頭してきたのが桐生。3年前に10秒01を出された時は「自分に出せるイメージがなく、ビックリした」。今、当時の本音をちゅうちょなく口に出せるのは自信の裏返し。今季の直接対決では2勝1敗。布勢では終盤に逆転勝ちした。「競り合いの場面で力みが取れてきた」と本来の持ち味がよみがえってきた。

 舞台ももってこいだ。大会には462人の報道陣が取材申請。最近のサッカー日本代表戦で380人ほどだったことを考えれば、その注目度がうかがえる。100回大会記念シートなども売り切れており、客席も満席になる可能性がある。大観衆で思い出すのはロンドン五輪。8万人収容の客席が埋まるなかでの予選で、10秒07の自己記録を塗り替えてみせた経験がある。

 優勝でリオ行きが決まる。「今季ここまで100点のレースはない」。満点を出すのは、国内最注目の戦いしかない。【阿部健吾】

 ◆今季の山県対桐生 5月8日のセイコーゴールデングランプリで初対決。向かい風0・4メートルの条件下で、10秒21の山県が2位、桐生が10秒27の4位だった。6月5日、布勢スプリントでは2度対戦。向かい風0・6メートルの1本目は、桐生が10秒23、山県が10秒25で桐生の勝利。向かい風0・5メートルの2本目は山県が自己新の10秒06、桐生が10秒09。山県がわずか0秒03差で先着して2勝1敗とした。